在宅ホスピスで患者管理とケアを行う「スマートテクノロジー」システムは、がん患者と家族介護者の双方に有用

(折畳記事)
*この要約には抄録にはない最新データが記載されています

319家族を対象にした研究の初期結果から、電話ベースの革新的な症状モニタリングとコーチングのシステムを在宅ホスピスでのケア中に利用することで、最期の数週間に患者が経験する症状が大幅に緩和されることが示唆された。本試験には4州12施設のホスピスが参加した。ホスピス利用家族の約半数(153家族)を症状へのケア介入を行う群へ、半数(166家族)を通常のケア(症状報告のみ)を行う群へとランダムに振り分けた。すべての家族はホスピスでケアを受けた。ケア介入群に参加した患者は、通常ケア群の患者より症状の重症度が大幅に軽減した。また、このシステムは通常ケア群よりも家族介護者の心身の健康を向上させた。患者とその介護者への恩恵がシステム利用開始日からすでにみられ、こうした傾向はホスピス利用中を通して継続してみられた。

「がん治療の現場では、患者が報告する症状を自動的に収集するようになってきています。ですが、まだ在宅ホスピスの現場には普及していません。この研究は、家族介護者に対する心身の健康のモニタリングや、愛する家族へのケアを向上させる方法に関するコーチングを対象とした、初の研究です」と語るのは、本研究の筆頭著者であるKathi Mooney博士(正看護師、ユタ州ソルトレークシティHuntsman癌研究所内癌制御・人口学プログラム主任、ユタ看護大学看護学特別教授)である。「このシステムは初期試作の段階ですが、スマートテクノロジーを利用して症状モニタリングとコーチングを行えばホスピスでのケア中のサポートが厚くなるのは明らかですし、終末期の患者がいっそう安らぐことができます。さらに、家族介護者の心身の健康が向上する手助けにもなるのです」。

電話をもとにした自動症状モニタリングシステムでは、コンピューター技術を用いて、患者が24時間以内に感じた症状や介護者の心身の健康について家族と『やりとり』を行った。モニタリングした患者の症状には、疼痛、呼吸困難、思考の変化、便秘や下痢、排尿困難、悪心や嘔吐、疲労感や体力低下、否定的な感情(落ち込みや憂鬱感)、不安、睡眠障害、食欲低下や経口摂取困難がある。追跡した介護者の症状には、疲労感、不安、睡眠障害、否定的な感情がある。

症状へのケア介入の内容は、1)報告された緩和しない症状を自動的に担当のホスピスナースに通知するシステム、2)介護者が患者の安心感を向上させ、介護者自身の心身の健康に対応するためのコーチングを自動的に行うシステム、の2つである。自動通知は、介護者が通信を終えるとすぐにホスピスナースに送信された。ホスピスナースは、モバイル機器でその報告にアクセスし、介護者とナース間でさらなる連絡を取り合うことも可能であった。通信中、介護者は症状の自然経過や介護者の報告した重症度にもとづいて自動生成されたコーチングをリアルタイムで受け取った。これには、愛する家族がより楽になる姿勢をとる方法、呼吸状態を改善する方法、昔のアルバムを見るなど一緒の時間をよりよく過ごす方法、などといった提案を行った。介護者への提案には、他の人に介助を依頼する方法、自分の時間を作る方法、よく眠れる方法、不安をやわらげ悲しみと向き合う方法、といったようなものがあった。またコーチングでは終末期に感じる症状を和らげ、その時起こっていることやホスピスナースと話し合うべき内容を伝えた。家族介護者はモニタリングとコーチングから多大な恩恵を受けた。ケア介入を受けた群では、中等度ないし重度の症状を感じる日数が通常介護の群よりも44%短かった。

家族介護者は、薬の服用をはじめ愛する家族をより楽にさせる介入に関する判断を行うため、在宅ホスピスでのケア中に辛い症状を和らげる重要な役割を担っている。家族が介護を行うことは利点が多いが、死別後は介護者の心身の健康に対して否定的な気持ちでストレスがかかる。事前研究では介護者の悩みは患者の症状と密接な関係があることが示された。そのため、患者のケアと介護者の心身の健康をモニタリングし改善することは、家族全体にとって終末期ケアを良くする上できわめて重要である。本研究は、スマートテクノロジーはケアを改善させる添加剤であり、死を迎える患者にさらなる安らぎを与え、家族介護者の心身の健康を向上させることが可能であると実証した。

本研究は米国国立癌研究所(NCI)の支援を受けている。

翻訳担当者 渋谷武道

監修 東 光久(総合内科、血液癌、腫瘍内科領域/天理よろづ相談所病院)

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