抗うつ薬サインバルタは化学療法誘発性末梢神経障害による疼痛を緩和できる

キャンサーコンサルタンツ

抗うつ薬サインバルタ®(デュロキセチン)は、タキサン系あるいは白金製剤を基本とした化学療法に伴ったしびれや疼痛を緩和すると考えられる試験結果が、Journal of the American Medical Association誌に掲載された。

末梢神経障害とは、四肢(両手足)のしびれや疼痛をいい、四肢と中枢神経系(CNS)の間にある神経が損傷を受けることで起こる。この疼痛を伴った症状は、タキサン系薬剤、白金製剤およびビンカアルカロイド系薬剤といった神経毒性をもつ化学療法剤の治療を受けた患者の約20〜40%で認められる。この症状は日常生活に持続的に影響を及ぼすことから、研究者らは疼痛を緩和する方法を探し続けている。

サインバルタは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)であり、セロトニンおよびノルアドレナリンの量を増やすように働く。セロトニンとノルアドレナリンは、精神のバランスを安定させる作用を持つとともに脳内での痛み信号の伝達を阻害する脳内の天然物質である。

研究者らは、有痛性の化学療法誘発性末梢神経障害に伴った疼痛に対するサインバルタの有効性を確認するため、第3相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照クロスオーバー試験を実施した。試験には、化学療法誘発性末梢神経障害で、グレード1以上の成人患者(25歳以上)220人が登録された。

患者は無作為に1対1に分けられ、サインバルタあるいはプラセボのいずれかを5週間服用した後、2週間の休薬期間を経てから、薬剤を入れ替えて5週間服用した。サインバルタの用量は、最初の1週間は1日30mg、その後4週間は1日60mgに増量した。

5週間の間に、サインバルタを服用した患者では、プラセボを服用した患者に比べ、疼痛の大幅な緩和が有意に認められた。さらに、程度にかかわらず疼痛の緩和が認められた患者の割合は、先にサインバルタを服用した方が、プラセボを服用するよりも多かった(59%対38%)。タキサン系薬剤を基本とした化学療法を受けた患者より、白金製剤を基本とした化学療法を受けた患者の方が、サインバルタは有効であった。

また、サインバルタは日常生活における疼痛の影響も軽減すると考えられる。サインバルタを服用した患者で、障害スコア(活動、気分、歩行、労働、人間関係、睡眠および生活の楽しみに与える影響を示す)の減少が有意に認められた。

有痛性の化学療法誘発性末梢神経障患者は、プラセボと比較してサインバルタを5週間服用することで疼痛を大幅に緩和することができると研究者らは結論づけた。

参考文献:
Lavoie-Smith EM, Pang H, Cirrincione C, et al. Effect of duloxetine on pain, function, and quality of life among patients with chemotherapy-induced painful peripheral neuropathy: A randomized clinical trial. JAMA. 2013; 309(13):1359-1367.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 田村克代

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん緩和ケアに関連する記事

遠隔医療によるがん緩和ケアは患者のニーズに合うの画像

遠隔医療によるがん緩和ケアは患者のニーズに合う

COVID-19パンデミック中、がん治療における遠隔医療の利用が急増した。この期間中、一時期、対面での医療が制限され、医師の診察の多くがオンラインで行われていた。最近は遠隔医療の柔軟性...
がん患者による医療用大麻の使用増加に対応を迫られる腫瘍医たちの画像

がん患者による医療用大麻の使用増加に対応を迫られる腫瘍医たち

一連の新たな研究により、がん患者におけるカンナビノイド使用の増加と、その傾向が及ぼす影響の一部に焦点が当てられている。 

複数の研究結果によると、がん治療を受けている人の約20%から40...
ポンセグロマブはがん悪液質治療に大変革をもたらすか?の画像

ポンセグロマブはがん悪液質治療に大変革をもたらすか?

治験薬であるポンセグロマブが、がん患者に影響を及ぼすことが多い衰弱症候群である悪液質に対して有効な治療薬になる可能性があることが、臨床試験結果から明らかになった。

悪液質の特徴的な徴候は...
オランザピンは化学療法中の吐き気を軽減しQOLを改善の画像

オランザピンは化学療法中の吐き気を軽減しQOLを改善

2024年ASCOクオリティ・ケア・シンポジウム発表の新研究ASCOの見解「化学療法誘発性悪心(嘔気、吐き気)は、化学療法で非常に多くみられる辛い症状で、患者のQOLが...