癌患者の抑うつは致死率を高める可能性
キャンサーコンサルタンツ
2009年9月
British Columbiaの研究者らは、メタ解析の結果、癌患者の抑うつは死亡リスクを予測するが、癌の進行は予測しないと報告した。本研究の詳細はCancer誌2009年9月14日号のオンライン版に発表された。[1]
抑うつは癌患者に多く、癌診断直後から治療中または治療完了後でも発症する。抑うつは症状が重い軽いにかかわらず、生活の質を著しく低下させる。また、重度の抑うつになると患者は極度に衰弱し、通常の日常活動にも支障をきたし、自殺念慮を持つこともある。癌が抑うつの原因になるということは理解できることである。しかし、癌の進行度と致死率に対する抑うつの影響は、抑うつではない癌患者と比較して、まだ明らかになっていない。これまでのところ、抑うつが癌進行度と生存率に対してどう影響するのかについて、さまざまに推測はされてきたがデータが不足している。また、抑うつ患者の標準治療を癌患者に適用させて疾患の進行や死亡といった有害事象を予防できるかどうかも不明である。
本研究は、癌患者の抑うつに関連した癌進行度の研究3件と致死率の研究25件の結果をメタ解析したものである。著者らは、癌進行度に対する抑うつの影響を示す根拠はみられないとしている。しかし、抑うつを併発した癌患者の方が抑うつを併発していない癌患者よりも致死率が25%高かったと報告している。癌患者死亡の既知のリスク要因を考慮し調整しても、抑うつを併発した患者の方が高い致死率を示すことに変わりはなかった。よって、抑うつは癌患者死亡と「因果関係がある」と示唆される。
コメント:癌患者の抑うつは、客観的な方法で研究するのが非常に難しい課題である。癌が抑うつの原因になることは確かである。少なくとも、本研究は、癌患者の致死率に対する抑うつの影響について更に研究が必要であることを示唆している。明らかな問題は、癌が原因の抑うつを治療することが癌患者の生存率に対して効果があるかどうかである。
参考文献:
[1] Satin JR, Linden W, Phillips MJ. Depression as a predictor of disease progression and mortality in cancer patients. A meta-analysis. Cancer [early online publication]. September 14, 2009.
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