がん治療におけるバイオシミラーは先行バイオ医薬品と同等の有効性と費用対効果
バイオシミラー抗がん薬は、その先行バイオ医薬品と同様に安全で有効とみられ、コストもかなり低いことが系統的レビューとメタ解析により報告された。
「広く使われている3つのがんバイオ医薬品ベバシズマブ(販売名:アバスチン)、トラスツズマブ(販売名:ハーセプチン)、リツキシマブ(販売名:リツキサン)に関して、バイオシミラー医薬品は先行バイオ医薬品と有効性が同等であることがわかりました」と、上級著者のAaron Kesselheim医師(ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、ハーバード大学医学部、マサチューセッツ州ボストン)はメールでロイター ヘルスに電子メールで答えた。
著者らがLancet Oncology誌で述べているところでは、米国ではバイオ医薬品を使用している患者は2%未満であるものの、バイオ医薬品は2019年に製薬業者に2,110億ドルの収益をもたらし、全米の医薬品売上の43%を占めた。
Kesselheim医師らは、2021年4月までに発表された英語の論文と抄録を、標準的な医学データベースで検索した。検索の対象は、がんに対する疾患修飾性バイオ医薬品とそのバイオシミラーを比較し、有効性または代替有効性の結果を報告したすべての文献とした。
検索の結果、メタ解析に含まれる3つの先発がんバイオ医薬品について1,811人が参加した6つの対照薬試験と、そのバイオシミラーについて12,310人が参加した31の試験が見つかった。
研究者らは、バイオシミラーの有効性臨床試験のデザインを解析し、対照薬の主要試験デザインと比較した。母集団の大きさ、盲検化、ランダム化を考慮し、無増悪生存期間などの代替指標に対する相対的変化のリスク比推定値を収集した。
バイオシミラーの試験には平均397人の患者が参加した一方、対照薬の試験には302人が参加した。また、バイオシミラーの試験では、ランダム化臨床試験が単群または観察試験よりも多く(バイオシミラーでは31試験中31、対照薬では6試験中3)、二重盲検試験が非盲検試験よりも多かった(バイオシミラー31試験中26、対照薬6試験中1)。
メタ解析では、バイオシミラーには厳格な臨床評価が行われたことと、すべての薬剤、がん種、転帰において対照のバイオ医薬品と同等の有効性があることが確認された。
「米国食品医薬品局の審査は厳格であり、ジェネリック医薬品は長い間、市場で安全に使用されています」とKesselheim医師は述べている。「しかし、一般的にバイオ医薬品はジェネリック医薬品よりも複雑であるため、一部の医師や患者の間ではバイオシミラーの使用に対して懐疑的な意見が多くあります」と指摘した。
「この研究により、バイオシミラー医薬品の安全性と有効性を裏付ける文献が増え、がん患者が安心してこれらの薬剤を求め、より低価格の恩恵を受けられるようになることを期待しています。使用されたバイオシミラーによる患者の転帰を引き続き追跡し、日常的な臨床使用において新たな問題が生じないか確認することが重要になるでしょう」と同医師は付け加えた。
この研究に関与していないJoseph Alvarnas医師(シティ・オブ・ホープ総合がんセンター、血液学・造血細胞移植科教授、カリフォルニア州デュアルテ)は研究結果を歓迎している。
「この安定性のあるメタ解析によって証明されたのは、これらが有効な薬剤であること、そして臨床試験はバイオシミラーの評価・承認プロセスの一環として実施されており、安定性があり効果的に実施された質の高い研究であるということです」と同医師はメールで述べている。「これらのデータによって、臨床医が患者の治療においてバイオシミラーの使用を検討する意欲が高まることを願っています」。
Alvarnas医師によれば、米国食品医薬品局は33のバイオシミラーを承認している。「バイオシミラーとその潜在的な使用法に関する知識は、ケア効率と治療管理を向上させる重要な要素になるでしょう」。
同研究に対する論説の共著者であるDouglas W. Blayney医師(スタンフォード大学医学部、カリフォルニア州スタンフォード)は、「バイオシミラーの価格の透明性は重要であり、費用削減は患者に還元されるべきです」と忠告している。
「安全性については、今後メタ解析で視野を広げ、否定的な試験や報告されない試験を把握していくべきです。また、医薬品に対する安全性の監視を強化し、新たな副作用やまれな副作用を検出しなければなりません」と同医師はメールで述べている。
本研究はArnold Ventures社の支援を受けた。著者らは利益相反のないことを宣言しており、Blayney医師は金銭的関係にある製薬企業が本研究とは無関係であることを公表している。
原典: https://bit.ly/3h177GB および https://bit.ly/3gHHxWK JAMA Oncology誌、オンライン版 2022年2月3日
翻訳担当者 白濱紀子
監修 東海林洋子(薬学博士)
原文掲載日
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