がん患者のワクチン追加接種はオミクロン株への予防効果が高い
がん患者へのワクチンの追加接種は、SARS-CoV-2(COVID-19を引き起こすウイルス)および感染力が強い最新の変異株オミクロン株に対し、著しく強力かつ広範な予防効果があることが新たなデータで示された。この予防効果は、治療状況にかかわらず、固形がん患者で一貫している。
オハイオ州立大学獣医学部およびオハイオ州立大学総合がんセンターアーサー・G・ジェームズがん病院、リチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC-James)は、COVID-19に対するmRNAワクチンの2 回接種は、免疫不全の患者の予防効果を持続させるには「全く不十分」であることを報告した。また、がん患者に対し、接種可能になり次第すぐに追加接種を受けるよう呼びかけている。
「世界中で進行中のパンデミックが3年目に入り、脆弱ながん患者を守るために、これは今後のワクチン接種戦略の指針となる重要かつ新たな知見です」と、本研究共同著者3人の一人であるZihai Li博医師は述べている。Li医師は、OSUCCC-JamesのPelotonia Institute for Immuno-Oncology の統括責任者およびオハイオ州立大学医学部の教授でもある。
「これは、免疫力が低下した患者集団において新型コロナウイルスのワクチン接種が緊急の重要課題であることをさらに裏付けるものです」と、共同上席著者でOSUCCC-James副所長兼医学部教授のPeter Shields医師は述べている。
本研究の筆頭著者のShan-Lu Liu医師は、「この結果は、がん患者にとって特に重要であるだけでなく、すべての人々が適時にこぞってワクチン接種を受けることの重要性を一層強調するものです」と述べている。Liu医師は、獣医学バイオサイエンス学部ウイルス学の教授およびオハイオ州立レトロウイルス研究センターの副所長でもある。
本研究結果は、12月29日付の「Cancer Cell」誌オンライン版で発表された(本誌より先行)。
最近発表された科学研究(Liu研究室の掲載前公開論文も含む)では、健常者へのワクチン追加接種によりSARS-CoV-2とその最新型であるオミクロン株に対する予防力が高まることが示されている。しかし、ワクチン追加接種が免疫不全の患者、特に積極的に治療を受けているがん患者にどのような影響を及ぼすかに関するデータは限られている。
研究のデザインおよび方法
今回の新たな研究でOSUCCC-Jamesの研究者らは、COVID-19ワクチンを2回(23人)または3回(27人)接種した固形がん(肺がん、乳がん、メラノーマ、泌尿生殖器がん、消化器がん)患者50人から検体を採取した。検体は、COVID-19ががん患者にどのような影響を及ぼすかを調べているSIIREN研究(Pelotoniaが資金提供)の一環として採取した。
OSUCCC-Jamesチームは、Liu医師の獣医学研究室チームと共同で、「中和抗体反応」について、つまりワクチン接種後に体の自然免疫系がどれだけ感染症(今回はSARS-CoV-2とその変異株)に対して反応・認識・撃退するかについて評価した。
オハイオ州立大学感染症研究所ウイルス・新興病原体プログラム共同ディレクターであるリLiu医師は、「検体数は少ないですが、この結果は、固形がんと診断されていても、ワクチン追加接種がSARS-CoV-2変異株(オミクロンを含む)を的確に予防する免疫応答誘導に悪影響はないことを明示しています」と付け加えた。
「がん患者へのmRNAワクチン2回接種では、オミクロン変異株に対する中和抗体価は親ウイルスに比べて約21倍低下し、実質的に予防効果がないことが示唆されましたが、がん患者への追加接種により低下は5倍にとどまり、健常者と同程度です」とLiu医師は述べている。「このことは、ワクチンの追加接種はがん患者の抗体レベルを高めるだけでなく、オミクロンを含むコロナウイルス変異株に対する抗体応答の範囲も広げることを示しています」。
Liu研究室の研究は、オハイオ州立大学獣医学部へのある寄付者からの私的支援を受けたものである。オハイオ州立大学の研究の共著者には、Cong Zeng、Jack Evans、Karthik Chakravarthy、Panke Qu、Sarah Reisinger、No Joon Song、Mark P. Rubinsteinが含まれる。
進行中の研究:SIIREN研究
OSUCCC – Jamesでは、現在進行中のSIIREN研究を通じ、COVID‐19ががん患者(特に積極的な治療を受けている人)にどのような影響を及ぼすかについて研究が続けられている。4月に開始された本研究は、Pelotoniaの資金提供により、SARS-CoV-2ががん患者の免疫系にどのような影響を及ぼすかを評価するものである。本研究は、COVID-19感染予防にワクチンがどの程度有効であるか、特定の治療を受けているがん患者においてワクチンの効果が低いかどうか、また免疫がどの程度持続するかについて、科学界全体で究明が進むことが期待されている。
「多くのがん治療法は免疫系に影響を及ぼし、一時的あるいは恒久的に感染しやすい状態になることがあります。その結果、感染しやすくなったり、感染が重症化したり、COVID-19感染によって死亡する確率が高くなったりする可能性があります。いまだ知見が得られていない領域であり、研究の必要があります」と、Li医師とともにSIIREN研究の共同責任研究者であるShields氏は述べている。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
がん医療に関連する記事
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる
2024年11月7日
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
早期承認薬、5年後の確認試験で臨床効果を示したのは半数未満
2024年4月19日
抗がん剤不足の危機的状況をASCO副会長が議会で証言
2024年2月27日
米国がん免疫療法学会 2023(皮膚、大腸、肺がん他):MDA研究ハイライト
2023年11月30日
アブストラクト:153...