がん患者をコロナワクチン試験に登録すべきとの共同声明を発表
ASCOとFriendsの共同声明で、ワクチン研究へのがん患者の参加を奨励
がんの患者またはがんの既往歴のある人であっても、安全上の理由で除外される場合を除き、COVID-19(新型コロナ)ワクチン臨床試験を含む臨床試験に参加できるようにするべきであるとの共同声明を、米国臨床腫瘍学会(ASCO)とFriends of Cancer Research (Friends:米国のがん研究支援団体)が本日発表した。
これまでCOVID-19ワクチンの臨床試験では、ほぼ例外なくがん患者を除外しており、また、多くの試験でがんの既往歴のある患者を除外している。これらの試験は、より狭い範囲のより均質な患者集団が登録されているため、合併症があり、場合によっては特定の免疫応答の低下している最も脆弱な患者の多くは、ワクチンが彼らにとって安全で有効かどうかを知ることができない。このことは、個人にとっても社会全体にとってもリスクを高めることになる。特に、複数のワクチンが米国食品医薬品局(FDA)や各国当局によって緊急使用が認められている現在、ASCOおよびFriendsは、適格規準を直ちに拡大し、がん患者を基本的に含めるべきだと述べている。
ASCO会長のEverett E. Vokes医師(FASCO)は次のように述べる。「がん患者は、COVID-19によって重症化、入院、死亡する可能性が特に高いことがわかっています。しかし、COVID-19ワクチンの臨床試験では、がん患者がほとんど除外されているため、治療中の患者にとってCOVID-19ワクチンがどれほど安全で有効であるかをよく理解するまでには、まだ長い道のりがあります。がん患者、各種免疫不全患者、あるいはその両方を患う人たちがワクチンにどの程度反応するかをよく理解するためには、十分な人数のがん患者またはがんの既往歴のある患者を試験対象とすることが極めて重要です」。
患者の安全性に対する潜在的リスクを示すエビデンスがあるなど特に禁忌とされない限り、前がん状態からがんが進行して死亡するまでの全過程を通して、患者が予防接種(COVID-19ワクチン接種を含む)を受けることをASCOや他の専門機関は推奨している。しかし、この推奨は、現在のところ、臨床的なエビデンスがなく、専門家の意見の一致に基づいている。COVID-19ワクチンによって、免疫システムが低下している人がどの程度の免疫と臨床的予防効果を得られるかについては十分解明されていない。がん患者に関する研究で、より具体的な洞察が得られるまでは、ワクチンを接種したがん患者は、SARS-CoV-2への曝露の可能性を減らすために、マスク着用と物理的距離に関するすべてのガイダンスに引き続き従うことが推奨される。
「私たちは、臨床試験の適格規準を広げることで、より多くの人に新薬を最適に使用するための情報を提供できるようになると強調し続けていますが、COVID-19ワクチンについても同じ原則が当てはまります。がん患者はCOVID-19による重症化のリスクが高いため、がん患者を臨床試験に登録し、がん患者に特化した試験を開発することによって、これらの重要なワクチンがどの程度の防御をしてくれるのかを十分に明らかにすることをメーカーや試験依頼者に対して強く求めます」と、Friendsの会長兼CEOであるJeff Allen博士は述べている。
ASCOとFriendsは、新たな共同声明の中で、次のように提言している。
ワクチン試験依頼者は、可能な限り広く患者を受け入れるように試験をデザインすべきである。既存および将来のCOVID-19ワクチン試験では、試験に参加することで被害を受ける具体的かつ確証的リスクがある場合にのみ、(現在または過去にがんにかかったことがある)がん患者や免疫不全患者を除外すべきである。
ワクチンメーカーと試験依頼者は、診療所、がんセンター、大学病院と連携して、がん患者の募集を優先すべきである。COVID-19ワクチン試験は、有効なサブセット解析ができるように、前向き研究として設計され、多様な集団や年齢層から十分な人数のがん患者が登録されるように募集するべきである。
ワクチンの開発および審査を監督する政府機関は、ワクチンメーカーに対し、既存および将来のCOVID-19ワクチン試験にがん患者を含めることを奨励し、促進するべきである。
公衆衛生機関やその他の研究機関は、臨床研究データに加えて、がん患者におけるワクチンの有効性に関するリアルワールドデータの設計、収集、解析を行うべきである。これまでのワクチン試験で少数でしか取り上げられていない集団については、このようなデータ収集によって、実際の臨床上の検討事項を最も包括的に理解することができるであろう。
今回の共同研究声明は、ASCOとFriendsが継続して行っている、がん研究適格規準の拡大と最新化に向けた取り組みに基づくもので、患者が臨床試験に参加しやすくなることを目的としている。両団体は、2021年4月に、5つの特定の共通適格規準(治療のウォッシュアウト期間、併用薬、先行治療、検査値の基準範囲と検査間隔、および患者のパフォーマンスステータス)に関する勧告を発表したが、2017年には、脳転移、登録の最低年齢、HIVの状態、臓器機能障害、および悪性腫瘍の既往または合併に関連する勧告を発表している。
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