<研究と患者アドボケート>がん研究の論文発表とその読み方

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 がん患者をケアするより良い方法を、医師や研究者らは常に模索しています。彼らは、医学を進歩させるために、研究を行います。これらの研究は実験室で、あるいは病院に通うボランティア患者で実施します。人で行う研究は臨床試験として知られています。よく練られた研究は、がんが体内でどのように作用するかという重要な疑問の解明に役立ちます。また、どのような試験や治療が最も効果的であるかがわかります。

しかし、これらの研究結果も他の医師らに知らされない限り、がん治療の向上にはつながりません。研究者がその知見を共有できる主な方法は、医学誌(学術誌、ジャーナルも同義)で発表することです。研究者は自ら実施した試験結果を記載した原著論文を発表することができます。あるいはレビュー論文を書くこともできます。レビュー論文とは、特定のトピックについて、過去に掲載されたすべての研究論文を吟味した論文です。

ほとんどのがん研究論文は、医師および研究者を対象として書かれます。しかし、患者がこれらの研究論文を読むことも多くなってきています。自分のがん種および治療選択肢を調べるうちに、研究論文を読むこともあるでしょう。研究論文には学術用語が用いられているので、科学的背景がない人には理解が難しいかもしれません。そのため、学術論文に掲載された研究について、ご自身の医療チームと話し合うことが大切です。

【研究の論文発表プロセス】

科学的研究は学術誌に掲載されます。学術誌は、がんの臨床研究など、特定のテーマに焦点を当てます。これらの学術誌は、研究分野に対して新しい知見を示すのに役立ちます。また、学術誌には、用いた研究方法の種類も掲載されます。

がん研究の学術誌は印刷物およびオンラインで発表されます。米国臨床腫瘍学会(ASCO)の学術誌もこれに含まれます。多くの学術誌は毎週、隔週、毎月または四半期ごとに刊行されます。

学術誌に掲載される前に、論文は内容領域の専門家による査読が行われます。査読とは編集者が査読者に論文を読んでもらうことです。査読者はその分野の専門家であり、その研究に関与していない研究者です。これらの専門家は、研究データおよび結果が妥当かどうかを判断します。

【研究論文の構成】

学術誌に掲載される研究論文は、一定の形式および構成にしたがっています。この形式では、他の人でもその試験を再現できるような形でデータが示されます。ほとんどの論文には、背景情報、研究者の方法、結果および知見の意味が記載されます。この構成は、序文(Introduction)、方法(Methods)、結果(Results)および(and)考察(Discussion)の頭文字をとってIMRADと呼ばれます。医学雑誌編集者国際委員会はこの形式を支持しています。しかし、学術誌によっては、これらの項目に異なる名称を使用している場合もあります。(*日本語訳も多少異なります)

◆ 序文(Introduction)  ・・この項では 2つの質問に答えます。

・なぜこの試験を実施したか。

・研究課題は何か。例:この治療で Ⅳ期の大腸がん患者の生存期間が延長するか。

◆ 方法(Methods)  ・・この項で著者は研究課題にどのように答えたかを記述します。著者は試験デザインについて説明します。また、以下のとおり、試験参加者について記述します。

・年齢、性別など、ボランティアに関する一般的情報。

・がんの種類と病期。例:Ⅰ期の肺がん。

・有志の試験参加者はどのように選ばれたのか。

この項には、治療がどのように、どのくらいの量で、どのくらいの回数で実施されたかのデータが含まれます。また、研究者はどのような治療成績(結果)を評価していたのかを記載します。この評価項目としては、生存期間の長さ、腫瘍の退縮量などがあります。また、データをどのように解析したかも示されます。

◆ 結果(Results) ・・この項では、試験の最も重要な知見に焦点を当てます。表や図を用いてさまざまな方法でデータが示されることもあります。

◆ 考察(Discussion) ・・この項は結論とも呼ばれます。研究目的に関連して、結果が何を意味するのかを記述します。また、結果をがん研究という広範な文脈で位置づけ、結果が先行研究を裏付けているか、または矛盾しているかにも言及します。この項は、知見の重要性を説明するのに役立ちます。

◆ アブストラクト/要旨(Abstruct) ・・アブストラクトは掲載された論文の冒頭にある要約です。アブストラクトは研究の最重要データを示します。これにより読者は研究の重要な側面を素早く知ることができます。研究者はしばしば学会でアブストラクトを発表します。実際、研究者は研究結果が掲載される前に、学会で初期の研究結果を発表することがよくあります。

【研究論文を検索する】

がん治療の最新の進歩に関する論文を探す方法は数多くあります。論文を見つけるためには、学術誌のウェブサイトを見ます。そして、検索機能またはアーカイブ(掲載論文リスト)のいずれかから論文を見つけることができます。

また、研究のアブストラクトを提供する大規模なオンラインのデータベースも利用できます。がん研究の分野で使用されている一般的なデータベースの一つにPubMedがあります。PubMedは米国国立医学図書館のサービスです。PubMedは広範囲に及ぶ学術誌から3,000万件(現時点で)以上の引用文献を含みます。引用は、情報を提供する出典に対する参照です。引用には、論文の表題、著者名および学術誌名が含まれます。

このデータベースの利用は難しいかもしれません。データベースには膨大な数の論文が含まれます。しかし、がんに関連する論文のみを検索することで、より簡単に検索できます。特定のトピックの詳細が見つけられない場合は、より多くの医学用語を入れて検索してみます。例えば、”kidney cancer(腎がん)”のかわりに “renal cell carcinoma(腎細胞がん)”で検索します。

アブストラクトはオンラインでしばしば無料でアクセスできます。学術誌を購読していないと学術誌の論文全文を読むことができない場合があります。しかし、一回分の料金を支払えば特定の論文を閲覧できる場合もあります。

医学雑誌を印刷物で閲覧希望される場合は、地元の図書館または大学でお尋ねください。

翻訳担当者 木下秀文 

監修 田原梨絵(乳腺科、乳腺腫瘍内科)

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原文掲載日 

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