<研究と患者アドボケート>創薬と薬剤開発
研究と患者アドボケート>がん研究>創薬と薬剤開発
(サイト注:本文中の「原文」へのリンクは、ウェブブラウザの翻訳機能を使用して日本語で閲覧可能です)
医師や研究者らは、がん患者をケアするためのより良い方法を常に模索しています。そのために、新薬の開発や研究を行っています。また、すでに使用可能な薬の新しい使用方法も探しています。
薬は、研究室でのアイデアからスタートし、医師が処方するようになるまでがゴールです。そこまでには長い開発と承認のプロセスを経なければなりません。この過程で、その薬が人々にとって安全に服用でき、有効にがんを治療できるものかどうかを確認します。このプロセスには、何年もの時間と莫大な資源がしばしば必要となりますが、実際に要する時間と資金は、その薬によって異なります。
新薬の発見と開発には、主に3つのステップがあります。
・非臨床研究:薬物が発見され、最初の試験を行います。
・臨床研究:薬剤を人に投与して試験を行います。
・市販後研究:薬剤が販売承認された後に行います。
創薬と初期試験
新しい抗がん剤の発見は、さまざまな形で起こります。
【偶然の発見】
1940年代の初め、爆発で船員が有毒なマスタードガスにさらされました。医師は、これらの船員の白血球数が少ないことを発見しました。そこで彼らは、ホジキンリンパ腫の治療に窒素マスタード、またはメクロルメタミン(マスターゲン)を使い始めました。ホジキンリンパ腫は白血球が関与するリンパ系のがんです。窒素マスタードは現在でも使われているがん治療薬です。しかし、このような偶然の発見はまれです。
【植物、菌類、動物の試験】
パクリタキセル(タキソール)は、いくつかの種類のがんを治療します。これが最初に発見されたのは太平洋イチイの木の樹皮からでした。さらに最近では、海綿という原始的な動物を使って、エリブリン(ハラヴェン)という薬が作られました。米国国立がん研究所(NCI)には、何千種類もの植物、海洋生物、細菌、菌類のサンプルがあります。これらは、新しいがん治療薬の発見を期待して、世界中から集められています。
【がん細胞の生物学的研究】
がん研究者の大半は、DNAに含まれる遺伝子とがん細胞の増殖パターンの両方を健康な細胞と比較することから始めます。これにより、がんの増殖過程における重要なステップが特定され、それを薬で修正することができるようになります。
例えば、すべての乳がんの約20%には特定のタンパク質が過剰にあることが研究でわかりました。そのタンパク質はHER2と呼ばれるもので、がん細胞の増殖と浸潤を制御しています。HER2を標的とする5つの薬が作られました。すなわち、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ラパチニブ(タイケルブ)、ペルツズマブ(ペルジェータ)、アドトラスツズマブ・エムタンシン(カドサイラ)、ネラチニブ(ネルリンクス)です。現在、乳がん患者では、腫瘍を検査してHER2の有無を調べます。これにより、これらの薬剤でがんを治療できるかどうかがわかります。これらの分子標的療法についての詳細は「分子標的療法を理解する(原文)」をご覧ください。
【薬物標的の化学構造の理解】
コンピュータを使って、研究中の薬剤が標的分子とどのように相互作用するかをシミュレーションすることがあります。これは、パズルの2つのピースを組み合わせるのに似ています。その後、研究者は特定の薬物標的と相互作用する化合物を作ることができます。
薬剤ができると、研究室でヒトの腫瘍細胞を使って試験を行い、薬剤ががん細胞の増殖を止めるかどうかを確認します。次に、動物を使って試験を行い、その薬剤ががんの治療になお有効であるかどうかを調べます。2種類以上の動物でその薬剤を試験し、動物の体に新しい薬剤がどのように作用するかを調べます。また、その薬剤がどのような副作用を引き起こす可能性があるのか、ヒトで試験する際にどのくらいの量の薬剤を投与すればよいのかを調べます。
【医薬品開発者と試験依頼者】
米国食品医薬品局(FDA)では、薬の開発や試験を行っていません。その代わりに、医学研究系大学、米国国立がん研究所(NCI)などの政府機関、および製薬会社が新しい薬剤を見つけて試験を実施しています。試験依頼者とは、薬剤を開発する団体のことです、試験依頼者は、FDAが薬剤を承認するために必要な研究を行います。
【バイオシミラー(バイオ医薬品の後発品)】
医薬品開発者は、がんを治療するためにさまざまな種類のバイオ医薬品(生物製剤)を作っています。バイオ医薬品の一種としてバイオシミラーと呼ばれるものがあります。
バイオシミラーは、FDAによってすでに承認されている薬剤の変種です。バイオシミラーによって、人々に提供できる新しい治療選択肢が増えています。バイオシミラーはまた、同等の薬剤よりも安価であることが多いです。
FDAは、バイオシミラーを既存の薬と比較することを要求します。既存の薬は対照薬剤と呼ばれます。バイオシミラーは、対照薬剤と比較して構造や機能が非常に類似していて、大きな違いがないことが求められます。
バイオシミラーは、安全で有効な治療選択肢であることを確認するために、FDAによる厳格な承認プロセスを満たす必要があります。バイオシミラーをあなたの治療計画に入れることができるかどうかについては、あなたを担当する医療チームにご相談ください。
【臨床研究】
新しい薬物をヒトで試験する前に、試験依頼者はFDAに治験実施申請書(IND)を提出しなければなりません。INDには、これまでの研究計画や将来の研究計画について、以下のような情報が記載されています。
・研究室で動物を用いて実施した非臨床試験
・ヒトへの臨床試験計画
・新薬の製造方法
FDAは、薬剤候補品をヒトで試験することを一定の条件で承認します。
・試験の結果、その薬剤が有効で、安全である可能性が高いこと。
・提案した臨床試験が正しく設計されていること。
・新薬を毎回同じ方法で作ることができること。
臨床試験は、ボランティアが参加する研究です。新しい薬剤が安全で、有効で、標準的な治療薬よりも優れているかどうかを調べるために行われます。各段階は、前の段階よりも多くの人が参加して行われます。また、新薬の安全性や有効性についてもより詳細に調べることができます。
臨床試験には数百人から数千人が参加することもあります。臨床試験が完了するまでには通常数年かかります。しかし、小規模の臨床試験で非常に有望な結果が得られた場合には、プロセスを早めることもあります。
臨床試験の初期段階では、安全性、用量、および体内での薬剤の代謝・排泄方法に焦点が当てられます。後の段階では、その薬剤の作用の仕方に焦点が当てられます。臨床試験の詳細については、「臨床試験とは(原文)」をご覧ください。
【臨床審査とFDAの承認】
臨床試験が成功した場合、製薬会社はFDAに新薬の製造販売申請(NDA)を提出します。NDAでは、薬剤を医師が処方できるよう承認を要求します。要請には、以下のような内容が含まれています。
・非臨床試験と臨床試験の結果。
・薬剤の作り方と表示の仕方についての詳細。
・薬剤で考えられる副作用や、食品や他の薬物との相互作用。
FDAは、薬剤が有効で安全に使用できることを示す証拠がある場合、その薬剤を承認することができます。どんな薬剤でも、完全に安全で副作用がまったくないものはありません。しかし、リスクよりも利点のほうが多い場合、薬剤は承認されます。
【FDAの承認後】
薬剤は、FDAの承認を受けると市場に出す準備が整います。つまり、医師が処方し、人々に販売することが可能になるということです。しかし、FDAは試験依頼者にさらに多くの臨床試験を行うよう要求することがあります。これらは第4相臨床試験と呼ばれます。
第4相臨床試験は、他の可能性のある副作用を探したり、治療の利点を確認します。試験依頼者は、異なる用量、新しい組み合わせ、または異なるスケジュールで薬を試験することがあります。また、高齢者や小児などの新しい集団で治療薬を試験することもあります。または、薬剤の長期的な有効性を評価することがあります。
一部の製薬会社は、独自の第4相臨床試験を行うことがあります。製薬会社は、別のタイプのがんの治療など、新しい方法での薬剤の使用に対してFDAの承認を得るために、より多くの研究を行うことがあります。
FDAはまた、現在市場に出回っている薬剤の安全性を監視します。これは、製薬会社が新たな副作用、または重篤な副作用を必ず報告していることを確認するために行われます。新しい研究で安全性や有効性の問題が判明した場合、FDAは薬剤の承認を取り消すことがあります。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
がん医療に関連する記事
先住民地域のラドン曝露による肺がんリスクの低減を、地域と学術連携により成功させる
2024年11月7日
「ラドンへの曝露は肺がんのリスクを高めますが、いまだに検査が行われていない住宅が多くあります。...
早期承認薬、5年後の確認試験で臨床効果を示したのは半数未満
2024年4月19日
抗がん剤不足の危機的状況をASCO副会長が議会で証言
2024年2月27日
米国がん免疫療法学会 2023(皮膚、大腸、肺がん他):MDA研究ハイライト
2023年11月30日
アブストラクト:153...