コロナウイルス(COVID-19)とがん (英国)
キャンサーリサーチUKは、英国の非営利機関です。
2021年2月23日更新分翻訳、次回更新予定2021年8月23日(2021年6月12日更新)
がん患者さんやその家族は、このウイルスについて特に不安を感じるかもしれません。がんとその治療は、感染と闘う能力を低下させる可能性があります。
【コロナウイルスとは何ですか?】
COVID-19は、新しいタイプのコロナウイルスによって引き起こされる感染症です。コロナウイルスにはいくつかの種類があります。風邪のような軽い病気を引き起こすものもあれば、呼吸や、呼吸器系に影響を与える重篤なものもあります。ほとんどの人にとって、ウイルスが深刻な問題を引き起こすことはありません。しかし、一部の人にとっては、ウイルスが重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
コロナウイルスは、主に人から人へと広がります。これは、ウイルスに感染している人が、咳やくしゃみをしたり、話したり、歌ったりした時、小さな飛沫が空気中に放出されることで起こります。この飛沫が近くにいる人に届き、その人がウイルスに感染することになります。
研究によると、コロナウイルスはステンレスやプラスチックの表面で最大3日間生きられます。しかし、そういった表面からウイルスに感染すると言い切れるほどの証拠はありません。
がんに罹患していると、病気になるリスクが高くなりますか?
がんに罹患していると、合併症のリスクが高くなります。これは、がんやその治療によって免疫力が低下し、感染症と闘う能力が低下するためです。免疫系は、コロナウイルスのようなウイルスによる病気や感染症から体を守ります。
また、がんの種類によっては、感染症と闘う能力が低下するものもあります。これは通常、白血病やリンパ腫など、免疫系に影響を及ぼすがんです。
【私はがん患者ですが、コロナウイルスの症状があります】
コロナウイルスに感染すると、以下のような症状がみられます。
• 37.8度を超える高熱
• 新たに継続的に咳が出る―咳が多く出て1時間以上続く、または、24時間以内に3回以上の咳の症状がみられる(もしも普段から咳をする人であれば、通常の咳よりもひどい症状になるかもしれません)。
• 味覚あるいは嗅覚の低下
コロナウイルスの症状や体調不良があり、がん治療を受けている方や免疫系に影響を及ぼすがんの方は、まず以下に連絡してください。
• 化学療法ヘルプライン
• あなたがかかっている病院の腫瘍内科救急部門(Acute Oncology Service)
医療チームは電話による評価を行い、あなたに自宅での生活をお願いすることもあります。
症状はみられるものの、がん治療中ではないという場合は、「NHS111オンラインコロナウイルスについて」を参照するか、NHS111に電話してください。
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【私はがん患者ですが、コロナウイルスから身を守るにはどうすればよいですか?】
がん患者さんの中には、COVID-19を発症すると、重症化するリスクが高い人がいます。このような人々は、「臨床的にきわめて感染しやすい人」と呼ばれます。
臨床的にきわめて感染しやすい人は、病気にならないように注意を払う必要があります。自分の住んでいる地域での感染者数を把握し、自分の住んでいる地域の、きわめて感染しやすい人向けのアドバイスに従ってください。一般的にするべきことは以下のとおりです。
•家で過ごす
•家族以外の人との接触を控える
•ソーシャル・ディスタンスを厳密に守るー少なくとも2メートル以上離れていること
•定期的に手を洗うか、手指消毒用のアルコールジェルを使用する
•店内や公共交通機関では顔面を覆うものを着用する(例外あり)
シールディング
パンデミックの初期には、臨床的にきわめて感染しやすい人は、シールディングと呼ばれる特別な措置を取らなければなりませんでした。状況に応じて、医師や医療チームから再度シールディングを求められるかもしれません。現在、イングランドでは、臨床的にきわめて感染しやすい人々はシールディングを行っています。
きわめて感染しやすいグループに属する人には次のような人がいます。
•化学療法を受けている。
•肺がんで、根治的放射線治療を受けている。
•治療の段階を問わず、白血病、リンパ腫、骨髄腫といった血液または骨髄のがんに罹患している。
•がんに対する免疫療法または他の継続的な抗体治療を受けている。
•その他、免疫系に影響するタンパク質キナーゼ阻害薬やPARP阻害薬などの分子標的療法を受けている。
•6カ月以内に骨髄移植や幹細胞移植を受けた人、または現在、免疫抑制剤の投与を受けている人
•大量のステロイド剤などの薬を服用している人
もし現在の治療内容や、感染しやすいグループに属するのかどうかがわからない時は、あなたの治療チームに相談しましょう。
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【私はがんですが、感染しやすいグループには当てはまりません。何をするべきですか?(ソーシャル・ディスタンス)】
もしも自分が感染しやすいグループではない場合、ソーシャル・ディスタンス、手洗い、マスク着用などの指針に従ってください。こうすることで、コロナウイルスに感染したり広めたりするリスクを減らすことができます。
この指針は、あなたがイギリスのどこに住んでいるかによって異なります。
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【がんになって治療を終えましたが、コロナウイルス感染のリスクはありますか?】
ほとんどのがん患者さんは、がんや現在の治療によって免疫系が弱っており、コロナウイルス感染した場合に重症化のリスクが高くなっています。また、肺がんで放射線治療を受けている患者さんもリスクがあります。
がん治療の後、通常免疫系は時間をかけて回復します。したがって、あなたがもし過去にがんを経験した場合は、きわめて感染しやすいグループには当てはまらないと思われますが、それは以下に当てはまる時です。
•治療が終了してからしばらく経過している。
•政府のウェブサイトに記載された健康状態に関するチェックリストの項目に1つも当てはまらない。
•(きわめて感染しやすいグループだという)通知を受け取っていない、また、地方自治体から連絡を受けていない。
もしも分からないことがあったり、自分がきわめて感染しやすいグループに属するか不安な時は、医療チームに相談してください。
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【がんかもしれない症状があります。どうするべきですか?】
がんによるものと思われる症状がある場合、やはりかかりつけ医に連絡をしてください。電話やオンラインで相談ができるかもしれません。医師はあなたの症状を聞き、来院や別の医師による診察が必要かどうかを伝えるでしょう。
咳が続いている場合は、そのことについてすべて医師に伝えることが重要です。新たに咳が続くのはコロナウイルスの症状の一つですが、人によってはがんの症状である場合もあります。予期せぬ体重減少、疲労感、食欲不振など、その他の症状についても医師に伝えてください。
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【がんと向き合い対処する】
がんと診断され、それに向き合うのは難しいことです。多くの人にとっては、コロナウイルスによって、心配や不安がさらに増えることになります。この時期に不安になるのも無理はありません。ですから、自分自身を大切にすることが重要です。
あなたが対処していくのに役立つ支援やサポートが用意されています。
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【ビタミンDのサプリメントの摂取】
健康な骨と筋肉のためには、ビタミンDが必要です。ビタミンDが不足すると、子どもの場合は「くる病」と呼ばれる骨の病気を引き起こす可能性があります。大人の場合、ビタミンDが不足すると、骨の痛みや筋力の低下を招くことがあります。また、高齢者の場合は、転倒の危険性が高まります。
通常、春から夏にかけて、私たちは日光を浴びることで十分なビタミンDを作り出します。しかし、10月から3月初旬にかけては、十分な量のビタミンDを作ることができません。これは、英国ではこの時期、太陽が空の低い位置にあるためです。食べ物から十分なビタミンDを摂取することも困難です。
そのため、英国政府は、秋から冬にかけて、ビタミンDのサプリメントを摂取することを推奨しています。
パンデミックが発生して以来、2020年の春から夏にかけて、多くの人が室内でいつもより長い時間を過ごしています。シールディングを継続している人もいます。多くの人がビタミンDを十分に作れていなかったと考えられます。そこで、この冬はビタミンDのサプリメントを摂取することがより重要になりました。
サプリメントは、スーパーや薬局などで購入できます。ビタミンDの推奨摂取量は、1日あたり10マイクログラム(400国際単位(IU))です。サプリメントにはさまざまな用量のものがあります。10マイクログラム(400IU)のビタミンDサプリメントが見つからない場合は、25マイクログラム(1000IU)を摂取することができます。
ビタミンDとCOVID-19
ビタミンDがCOVID-19発症リスクを低減するという報告があります。十分なビタミンDを摂取することで、一般的な風邪やインフルエンザを予防できるという研究もあります。
しかし、栄養に関する科学諮問委員会(SACN)は、胸部感染症の治療や予防のためにビタミンDを使用する研究に関して十分なエビデンスがないとしています。そのため、推奨はしていません。SACNは英国公衆衛生庁(Public Health England)をはじめとする英国政府機関に助言を行っています。
英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence, NICE)は、COVID-19の予防や治療のためにビタミンDサプリメントを摂取することについては、エビデンスがないとしています。NICEは、COVID-19の予防や治療にビタミンDがどの程度効果があるかを調べるために、より質の高い研究を推奨しています。
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【コロナウイルスの臨床試験】
コロナウイルス(COVID-19)のSPIKE-1試験 – CRUKの医薬品開発センター
パンデミックの間、がんの臨床試験が休止される中、COVID-19に対する国家的、世界的な取り組みに参加したキャンサーリサーチUKの研究者らがいます。
キャンサーリサーチUKは、学術研究の資金調達と発展を支援する慈善団体であるLifeArcから資金提供を受けている、ある臨床試験を支援しています。この研究はCOVID-19だけに関するものであり、がんの臨床試験ではありません。
この試験の目的は、カモスタットと呼ばれる薬が、コロナウイルス(COVID-19)の症状の悪化を防ぐのに役立つかどうかを調べることです。この試験は、以下のような人を対象としています。
•50歳以上
•コロナウイルス(COVID-19)の陽性反応が出たことのある人
•自宅での生活に支障がない人
この試験はキャンサーリサーチUKの医薬品開発センター(Centre for Drug Development, CDD)によってサポートされています。
COVID-19とがん患者を対象とした研究(SOAP)
この研究では、がん患者と非がん患者のCOVID-19を調べ、免疫系がどのように応ずるかを調べています。
免疫系は、体がCOVID-19のような感染症や、がんなどの病気と闘うことを助けます。
COVID-19の症状は、非常に軽症なものから重症なものまでさまざまです。免疫系がどのようにウイルスを見つけて応じるかによって、どのような症状が出るかが決まります。
2021年1月、研究チームはSOAP試験の初期(中間)結果を発表しました。後日、さらに詳しい結果を発表する予定です。
この試験では、固形がんの患者さんが、がんではない人と同じようにCOVID-19と戦うことができることが示されました。これは、進行がんの人も、がん治療を受けている人も同じでした。
血液のがん(血液がん)の人は、ウイルスに対する応答に違いがありました。多くの人は、ウイルスを駆除するのに時間がかかりました。
研究チームは、固形がんの患者さんの多くは、がんでない人と同じようにCOVID-19と戦うことができると結論づけています。がん患者はCOVID-19に対する抗体を作ります。
しかし、ある種の血液がんの人はそうではありません。このような人たちには、綿密なフォローアップやワクチンの追加接種など、より慎重な管理が必要になるかもしれません。
研究チームは現在、COVID-19の予防接種ががん患者の免疫系にどのような影響を与えるかを調べています。
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