NCCNガイドラインの適応外推奨に確固たるエビデンスが示される

FDAに承認された適応症以外の使用推奨についての詳細な再解析

米国の複数の機関から集まった著者のグループは、2019年8月2日Annals of Oncology誌に寄稿した記事の中で、薬剤の適応外使用はがん診療において頻繁に行われている、と述べた。彼らは、全米包括的がんセンターネットワーク(NCCN)のがん診療ガイドラインに記載されている適応外推奨の詳細な再解析を実施し、米国食品医薬品局(FDA)に承認された適応症以外の推奨を裏づけるエビデンスの強さは確固たるものであり、これらの薬剤グループの相当数は後にFDAに承認されている、あるいはランダム化比較試験(RCT)で裏づけられていることを明らかにした。RCTデータのない推奨は、多くの場合、希少がんや有効な治療法がないがんに対して高い奏効率を有するメカニズムに基づいた薬剤に対するものである。

治療法の適応外使用は、米国ではおよそ30%であると推定されている。適応外使用が多く行われている背景は多角的で、FDAで規定されている適応症の範囲が比較的狭いことが多いこと、特定のがんや治療に対して使用できるFDA承認済み薬剤の不足、FDAの承認や臨床試験を通じてアクセスできない可能性のある患者に対して有望な新薬を提供したいという要望が要因である。加えて、新たな治療に対しFDA承認薬の使用を裏づける肯定的試験があったとしても、製薬会社は費用がかかることを理由にこのような拡大された適応症に対してFDAの承認を求めることができない可能性がある。適応外薬剤の処方に対する保険の適用範囲は、医薬品集の使用を基準としている。

今回の研究は、BMJ誌2018年3月号で発表された後ろ向き観察研究を受けて実施された。NCCNガイドラインで推奨されている抗腫瘍薬の適応外使用についての解析に基づき、当該記事の著者らにより次のように締めくくられていた。「NCCNは、新薬、ブランド薬であっても、FDAが承認した適応症以外を頻繁に推奨している。このような推奨を裏づけるためにNCCNが引用したエビデンスの強さは弱い」。

具体的には、NCCNの113件の推奨についての以前の解析で、エビデンスが弱いと特徴づけられた44件の適応外推奨が報告された。このことが後押しとなり、サンディエゴにあるカリフォルニア大学サンディエゴ校、ムーアズがんセンターのRazelle Kurzrock氏らが主導する研究チームは、NCCNガイドラインに記載されている適応外推奨を裏づけるエビデンスおよびこれらの推奨の論理的根拠について評価することにした。

44件の適応外推奨のうち、後にFDAに承認された、またはRCTのデータに裏づけられていたのは14件であった。加えて、8件の推奨はFDAの適応症からごく少数を外挿したものであり、5件については実際には適応内使用であった。残りの外挿17件のうち、8件は奏効率の中央値が43%で利用可能な治療選択肢がわずかな希少がんまたはサブセットに適用される薬剤のメカニズムに基づいており、7件は非RCTデータに基づき奏効率50%以上という有意な有効性を示していた。そして2件は効果や安全性がより高い新規の治療法が利用可能になったことで、後にNCCNガイドラインから削除されていた。

これらの結果は、頻繁に行われるFDA承認済み適応症以外の治療において、全身薬に対するNCCNの推奨は科学的エビデンスに基づいているというこれまでの研究と一致している、と著者らは締めくくった。ほとんどの場合、NCCNガイドラインの適応外推奨を裏づけるエビデンスの強さは確固たるものである。有効な薬剤が利用可能になった場合、特異的な臨床状況に対しFDAが承認した適応症がない場合でも、患者がこれらの治療法を受けられるようにすべきであるとNCCNは主張している。

参考文献

Kurzrock R, Gurski LA, Carlson RW, et al. Level of evidence used in recommendations by the National Comprehensive Cancer Network (NCCN) guidelines beyond Food and Drug Administration approvals. Annals of Oncology; Published online 2 August 2019. pii: mdz232. doi: 10.1093/annonc/mdz232.

翻訳担当者 生田亜以子

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学奈良病院)

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