米国の癌サバイバーのうち3分の1が経済的または就労上の困難を抱えている可能性

*この要約には抄録にはない最新データが記載されています

約1,600人の癌サバイバーを対象とした最近の調査の結果、経済的および就労関連の困難を抱えるケースが多いことが示唆された。27%が少なくとも1つの経済的問題(たとえば、借金、破産など)を報告し、37%が長期休暇を取ったり退職を遅らせるなど、就労上の計画を変更する必要があったことを報告した。女性、若年者、人種または民族少数派、および医療保険未加入者のサバイバーはいずれも、これらの困難の負担を負っている割合が高かった。

以前の研究の大多数は、小規模な癌患者のサブグループに焦点を当てたり、医療費について調査したものであったが、サバイバーが抱える実際の経済的負担については触れていなかった。本研究は、癌サバイバーからなる全国の大規模な代表集団において、経済的負担の格差を探索する初の研究である。

「多くの癌サバイバー、特に若年者や貧困層出身者が経済的または就労上の困難に見舞われており、それは医療保険に加入していた場合または治療後数年経った場合でさえも同様です」と本研究の主著者で、癌サバイバーであり、カリフォルニア大学デービス校Betty Irene Moore看護学校の博士課程学生でもあるRobin Whitney看護理学士は述べた。「これらの問題は生活の質や健康状態に著しく影響を与えるため、問題を解決することは、質の高い癌医療を提供する上での重要な側面です」。

本研究では、より大規模な研究(2011 Medical Expenditures Panel Survey Experiences with Cancer Survivorship Supplement)で調査の対象となった参加者の部分集団に焦点が当てられた。調査対象となったサバイバー1,592人のうち、47%は65歳未満、56%は女性、88%は白人、4%は医療保険未加入であった。治療状態に関しては、14%が治療中、46%が治療後5年未満、39%が治療後5年以上であった。

全般的に、調査対象となったサバイバーの27%が少なくとも1つの経済的困難を報告し、また37%が癌の診断により少なくとも1つの就労上の変更を行ったと報告した。治療中のサバイバーは、治療後5年未満のサバイバーに比べて、経済的困難を120%多く報告した。65歳未満のサバイバーは65歳以上のサバイバーに比べて、経済的困難を130%多く報告し、医療保険未加入のサバイバーは加入いているサバイバーに比べて67%多く経済的困難を報告し、また非白人人種または少数民族は42%多く経済的困難を報告した。女性は男性に比べて少なくとも1つの就労上の変更を行うことが有意に多かった。治療中の患者は、治療後5年未満のサバイバーに比べて就労上の変更を行うことが120%多く、非白人の少数派は、白人に比べて就労上の変更を行うことが57%多かった。

著者らによると、本研究の調査結果は、米国の地域住民について一般化できるものであり、癌サバイバーシップ、すなわち診断からその後長期にわたるサバイバーとしての生活の全過程で生じる経済的および就労上の困難を、スクリーニングし援助することが急務であることを示すものである。米国臨床腫瘍学会(ASCO)を含む全国組織の数団体では、経済的および就労上の問題を抱えるサバイバーに役立つ情報源を提供している。

翻訳担当者 星野 恭子

監修 後藤悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)

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