カルチノイド症候群の下痢症治療にテロトリスタットエチルをFDA承認

速報

2017年2月28日

米国食品医薬品局(FDA)は、ソマトスタチン類縁体(SSA)単独では下痢を十分にコントロールできないカルチノイド症候群成人患者に対する併用薬として、telotristat ethyl[テロトリスタットエチル](商品名:Xermelo)錠剤を本日承認した。

カルチノイド症候群はカルチノイド腫瘍を有する患者にしばしばみられる一連の症状の集合である。カルチノイド腫瘍はまれな腫瘍であり、増殖は遅いことが多い。その大多数は消化管で発見される。カルチノイド腫瘍を有する患者のうちカルチノイド症候群を生じる患者は10%未満で、肝臓への転移後に生じるのが普通である。カルチノイド症候群の患者ではホルモンであるセロトニンが過剰に放出され、その結果として下痢を生じる。コントロール不能な下痢の合併症としては体重減少、栄養失調、脱水、電解質平衡異常などがある。

「カルチノイド症候群による下痢が十分にコントロールできない患者にとって、今回の承認が新しい治療選択肢となります」。FDA医薬品評価研究センター・医薬品評価第三室長のJulie Beitz医師はこう話している。

テロトリスタットエチルは、SSAと併用するという条件下で、13回日常の食事とともに経口摂取する錠剤として承認された。テロトリスタットエチルはカルチノイド腫瘍によるセロトニン産生を抑制することで、カルチノイド症候群における下痢の発生頻度を減少させる。

テロトリスタットエチルの安全性および有効性については、高分化型の転移性神経内分泌腫瘍を有し、カルチノイド症候群による下痢を呈する成人患者90人を対象とした12週間の二重盲検プラセボ対照臨床試験により確認された。この対象患者は標準用量のSSA3カ月以上投与されているにも関わらず1412回の排便があった。SSA治療を継続したうえで、13回プラセボまたはテロトリスタットエチルを投与する各群に患者を無作為に割り付けた。SSAにテロトリスタットエチルを追加した患者では、プラセボを追加した患者に比べ、平均排便回数が大きく減少した。具体的には、1日あたりの排便回数が平均2回減少した患者はテロトリスタットエチル群で33%、プラセボ群で4%であった。

テロトリスタットエチルの副作用として多く見られたものとしては悪心、頭痛、肝酵素γ-GTP上昇、抑うつ症状、体液の集積による腫脹(末梢性浮腫)、鼓腸、食欲減退、発熱などがある。また、テロトリスタットエチルは便秘をもたらすことがあり、排便回数が14回未満の患者で発症リスクが高くなっていた。臨床試験で推奨量より高用量のテロトリスタットエチルを投与した患者では重度の便秘となった。患者のうち1人が入院となり、別の2人も腸穿孔もしくは腸閉塞を発症した。重度の便秘に対するモニタリングが必要である。重度の便秘、または重篤、持続性または悪化する腹痛がある患者については、テロトリスタットエチルの服薬を中止し主治医に相談すべきである。

FDAはテロトリスタットエチルの承認申請を優先承認審査薬指定とし、優先審査を行った。また、希少疾病に対する薬剤開発を財政的に支援、奨励するためのオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定も受けている。

テロトリスタットエチルはLexicon Pharmaceuticals社の子会社、Woodlands社の製造である。

翻訳担当者 橋本 仁

監修 東海林 洋子(薬学博士)

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原文掲載日 

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