電話による早期の緩和ケアサポートで介護者の生活の質が改善/米国臨床腫瘍学会(ASCO)
患者、がんサバイバー、介護者のQOLを改善する新たな戦略が研究で明らかに(ASCO2014)(折畳記事)
ENABLE IIIと呼ばれる新たな試験の結果から、緩和ケア電話サポート特定プログラム(specific palliative care phone-based support program)が、進行癌患者の介護者に有益性をもたらすことが明らかになった。この知見では、介護者への緩和ケアサポートサービスを早く導入するほど、介護の質を高められることが示唆されている。
「介護する家族は患者のケアで重要な役割を果たします。介護者の健康状態と患者の健康状態は相互に影響し合いますから、介護者が緩和ケアを受ければ双方で有益性が得られます」と試験の統括著者Marie Bakitas看護学博士(Marie L,O’Koren Endowed Chair(Marie L,O’Koren寄付講座教授)、アラバマ州バーミンガムのアラバマ大学看護学部教授)は語る。「今回の試験から、患者が進行癌と診断された頃に介護者が緩和ケアサポートを受けた始めた場合、介護者は落ち込むことが少なくなり、介護に取り組むことによる負担感が軽減されていることを実感するようになり生活の質が向上することがわかりました」。
連邦政府資金提供で、患者および介護者の緩和ケア介入を初めて並行して実施したこの試験では、再発性または転移性癌患者207人、家族内介護者122人が電話ベースのケア介入による緩和ケアサポートを受けた。第1群の患者と家族内介護者にはランダム化から2週間以内にこのケア介入を開始し(即時実施群)、もう一方の群では12週間遅れてケア介入を開始した(遅延実施群)。今のところ、解析では介護者にとってのみの有益性が評価されている。
登録および対面評価後、緩和ケアの上級看護師が電話ベースのカリキュラムCharting Your Course(患者の療養経過の方向付け)を実施し、毎月1回電話で介護者および患者にケアサポートを提供した。このカリキュラムには、創造性、楽観性、計画性および専門家の情報を活用した問題管理法、自己管理(健康的な食事、運動、リラクゼーションなど)、症状管理の際に患者にとって効果的なパートナーとなるための方法、サポートネットワークの構築法、意思決定、意思決定支援、アドバンス・ケア・プランニング[注釈]といった事項が網羅してある。Charting Your Course カリキュラムはこの研究試験用に開発されたものであるが、誰もが利用できる。電話で行われるこのプログラムは、地方の介護者でも簡単に連絡を取りサポートを受けることができるものである。
研究者らは、総合的な生活の質、気落ち(抑うつ)、求められる負担といった項目すべての改善度が即時実施群の方で遅延実施群よりも高かったことを明らかにした。早期ケア介入により気落ち(抑うつ)の軽減に大きな効果が、さらに生活の質の向上および介護に対する負担感の軽減に小~中程度の効果が得られた。
「不幸なことに、癌治療では緩和ケアを導入するのがしばしば大幅に遅れてしまうため、緩和ケアサービスの利点が全面的に生かされることは稀です。患者と介護者は緩和ケアが終末期のケアというよりは、根治的な治療と共に提供することのできる追加のサポートであると理解すべきです」とDr.Bakitas氏は述べた。
緩和ケアは重篤な疾患に起因する症状、疼痛、ストレスの緩和に焦点を当てる。緩和ケアとは、患者および家族の生活の質改善を目的とする、患者、医療専門家、家族間の協力体制と定義される。
進行癌患者の介護者を対象にした組織的な緩和ケアプログラムはほとんどない、しかもこの種の診療に対する保険は非常に限られている。Family Caregiver Alliance’s National Center on Caregiver website(国立家族介護人同盟センター介護ウェブサイト)の電子版 family care navigator(家族介護ガイド)ツールは、家族内介護者が地方における支援を見つけるのに役立つであろう。
ENABLE III試験で得られた、患者の転帰に関する結果については、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で別途発表される予定である(抄録#9512)。
この研究は米国国立衛生研究所(NCI)から支援を受けた。
ASCOの見解
「この画期的な試験から、愛する人が疾患に罹患している期間中、家族内介護者はサポートを受ける必要があること、このサポートは開始が早いほど的確な効果を得られることが明らかになりました」とPatricia Ganz 医師(ASCOフェロー、ASCO専門委員)は述べた。「介護者の精神衛生および福祉の改善は優れた緩和ケアに不可欠な要素です」。
注釈
患者の価値観を確認し、個々の治療の選択だけでなく、全体的な目標を明確にすることを目標にしたケアの取り組み全体を指す。ここでは患者や家族と医療者が常にチームとなってその患者にとってのベストのケア計画を模索し続けることが求められている。
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