GlucarpidaseのFDA承認

商品名:Voraxaze

・腎機能障害によりメトトレキサートクリアランスが遅延した患者における、危険限界以上のメトトレキサート血中濃度の治療に適用

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物相互作用および禁忌などの全処方情報はFull prescribing information(原文)で参照可能である。

2012年1月17日、米国食品医薬品庁(FDA)は、glucarpidase注射剤(Voraxaze、 製造販売者:BTG International Inc社、以下「本剤」)を、腎機能障害によりメトトレキサートクリアランスが遅延した患者における危険限界以上のメトトレキサート血中濃度(1 μmol/L超)の治療に対して承認した。本剤は、予測されるメトトレキサートのクリアランス(メトトレキサート血中濃度がメトトレキサート投与量に特異的なメトトレキサート排泄曲線平均の標準偏差値2倍以内)を示す患者、又は治療用量以下のメトトレキサート曝露による潜在的なリスクのため、正常もしくは軽度の腎機能障害患者に対しては適用とされなかった。

本剤の承認は、メトトレキサート血中濃度の速やかで持続した臨床的に重要な減少(RSCIR)という薬力学的な評価項目に基づくものである。RSCIRは、本剤投与後15分以内にメトトレキサート血中濃度が1 μmol/L未満に達し、8日間まで持続することとして定義される。

本剤の有効性は、腎機能障害により二次的にメトトレキサートクリアランスが遅延(上記の標準的ノモグラムで示された平均の標準偏差2倍以上)した22人で検証された。有効性評価の対象は、高速液体クロマトグラフィーにより信頼性のあるメトトレキサート測定値を得るために、確立された手順で処理された投与前及び投与後のそれぞれの血漿試料が得られている患者に限定された。

全ての被験者は、本剤50 Units/kgを5分以上かけて静脈内投与された。本剤投与前のメトトレキサート血中濃度が100 μmol/ L超の被験者は、初回投与から48時間後に本剤の2回目の投与を行うこととした。被験者全員に対して、静脈からの水分補給、尿アルカリ化剤投与及びロイコボリンによる救援療法も十分に行った。

22人中10人が、メトトレキサート血中濃度[45%(95%CI:27~65%)]に関するRSCIR基準を満たした。有効性は、治療前メトトレキサート血中濃度に依存していた。ベースライン時のメトトレキサート血中濃度が1~50 μmol/Lであった13人中10人(77%)はRSCIRを満たした一方、本剤投与前メトトレキサート血中濃度が50 μmol/L超であった患者9人ではいずれもRSCIRに達しなかった。評価可能な全症例が、治療前ベースライン時のメトトレキサート血中濃度より95%以上の減少を示し、本剤投与後8日間維持された。

安全性データについては、2つの単群オープンラベル多施設共同臨床試験で投与を受けた被験者290人を対象に評価された。これら2試験では、腎機能障害により二次的にメトトレキサートクリアランスが著しく遅延した患者が登録された。年齢中央値は17歳(生後1カ月~85歳)で、64%が男性、32%で骨原性肉腫または肉腫、63%が白血病またはリンパ腫であった。主な有害事象(頻度1%以上)は、知覚異常、紅潮、悪心及び/又は嘔吐、血圧低下および頭痛が認められた。

医療関係者は以下に留意すること。

本剤投与後48時間以内のメトトレキサート血中濃度については、本剤の代謝物[4-deoxy-4-amino-N10-methylpteroic acid(DAMPA)]の干渉を受けるため、クロマトグラフィー測定法のみが確実に測定可能な方法である。免疫測定法で測定した本剤投与後48時間以内のメトトレキサート血中濃度は、メトトレキサート血中濃度を過大評価する可能性がある。

ロイコボリンは本剤の基質であるため、ロイコボリンを本剤の投与前後2時間以内は投与しないこと。

本剤の推奨用量及び投与スケジュールは、静脈内注射として50 Units/kgを単回投与する。

この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

翻訳担当者 菅原宣志

監修 須藤 智久  監修 (臨床薬学修士・国立がん研究センター 東病院 臨床開発センター)

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