局所進行子宮頸がんでは化学放射線療法後のカルボ/パクリ追加治療は生存期間を延長しない

【米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解】

「本試験によって、化学療法と放射線療法(以下、化学放射線療法)を実施後に化学療法を追加しても、局所進行子宮頸がん患者の生存期間は延長しないという明確なエビデンスが得られた。この結果は、局所進行子宮頸がんの治療では化学療法を追加すべきではないことを示しており、実地医療に急激な変化をもたらす。「化学療法を追加することによって生じる副作用や毒性を患者が経験しなくて済むことになった」とASCO会長Lori J. Pierce 医師(FASTRO:米国放射線種学会フェロー、FASCO:米国臨床腫瘍学会フェロー)は述べた。

標準的な化学放射線療法実施後に化学療法を追加しても、局所進行子宮頸がん患者の生存率は改善せず、副作用が増加することが第3相国際共同試験の結果より明らかになった。これらの長期予後に関する結果は、2021年のASCOの年次総会で発表される。遠隔転移による再発抑制を期待して、化学療法を追加していた医師らは、直ちに治療方針を変更するであろう。

【試験の概要】

目的:標準的な化学放射線療法後に化学療法を追加したときの生存率に対する効果を、標準的な化学放射線療法のみの場合と比較して検討する。

対象患者:局所進行子宮頸がん患者919人

結果5年後の全生存率は、化学療法を追加した群と化学放射線療法のみの群でそれぞれ72%および71%であり、両治療群で同程度であった。 

再発が認められなかった患者の割合は、化学療法を追加した群では63%、化学放射線療法のみの群では61%であり、疾患再発状況は両治療群で同様であった。

割付後1年までに発現した重篤な有害事象(グレード3~5)の発現割合は、化学療法を追加した群で81%、標準治療のみの群で62%であった。

結論:待ち望まれた今回の試験結果により、現在の標準的治療法である化学放射線療法が、現時点ではもっとも優れた治療法であることが裏付けられた。化学療法の追加をいち早く採用していた医師らは、本試験の結果を踏まえて、重篤な有害事象の発現を防ぐため、局所進行子宮頸がん患者には追加治療を実施しないという方向へ方針転換するであろう。

【主な知見】

局所進行子宮頸がんの標準治療は、シスプラチンを中心とした化学療法を放射線療法と同時に実施する化学放射線療法である。しかし、化学放射線療法を実施しても極めて多くの患者が、遠隔転移により再発し、死亡に至る。化学放射線療法後にカルボプラチンおよびパクリタキセルによる化学療法を追加する方法は、転移・再燃した子宮頸がんの初期治療として有効であり、また、他のがんでは補助療法としても有効であるため、一部の腫瘍専門医は、局所進行子宮頸がんの女性に対しても日常診療で化学療法の追加を行っている。しかし、化学療法の追加の是非に関する大規模な第3相試験でのエビデンスは、これまで得られていなかった。

第3相試験であるOUTBACK試験では、局所進行子宮頸がん患者に対して化学放射線療法後に化学療法を追加しても、標準的な化学放射線療法のみを行った患者と比較して、生存率の改善は認められなかった。

5年後の全生存率(OS)は化学療法を追加した群と標準的な化学放射線療法のみの群で、それぞれ72%と71%と同程度であった。また、5年間の無増悪生存率(PFS)は、化学療法を追加した群で63%、標準的な化学放射線療法のみの群で61%であり、2つの治療群で同程度であった。

割付後1年までに発現した重篤な有害事象(グレード3~5)の発現割合は化学療法を追加した群で81%、標準的な化学放射線療法のみの群で62%であり、化学療法を追加した群で発現割合が高かった。

「本試験より、局所進行子宮頸がんの患者に対する治療としては、化学放射線療法のみによる治療が現時点ではもっとも優れていることが確認された。化学放射線療法後の化学療法の追加は効果が得られないだけではなく、重篤な副作用の発現割合も増加する」と、オーストラリア・メルボルンのPeter McCallumがんセンターの腫瘍内科医である筆頭著者Linda R. Mileshkin医師は述べた。

【試験について】

本試験は、局所進行子宮頸がん患者919人を対象とした第3相国際共同試験である。シスプラチンをベースとした標準的な化学放射線療法のみを受ける群と、標準的な化学放射線療法後にカルボプラチンとパクリタキセルによる化学療法を追加する群に患者をランダムに割り付けた。

主要評価項目は5年間のOSであった。また、PFS、副作用、再発の状況についても検討した。

【次のステップ】

標準的な化学放射線療法後に化学療法を追加した場合と追加しなかった場合における進行子宮頸がん患者の精神的・性的健康への影響などの副次評価項目を評価するために、追加解析を行う予定である。

翻訳担当者 伊藤友美

監修 勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学 武蔵小杉病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

子宮がんに関連する記事

リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まるの画像

リンチ症候群患者のためのがん予防ワクチン開発始まる

私たちの資金援助により、オックスフォード大学の研究者らは、リンチ症候群の人々のがんを予防するワクチンの研究を始めている。

リンチ症候群は、家族で遺伝するまれな遺伝的疾患で、大腸がん、子宮...
一部の早期婦人科がんにペムブロリズマブ+化学放射線や抗Claudin6抗体薬物複合体が有益の画像

一部の早期婦人科がんにペムブロリズマブ+化学放射線や抗Claudin6抗体薬物複合体が有益

ESMO 2024で報告された研究により、現在の標準治療に免疫療法を追加することで臨床的に意味のある利益が得られる早期の子宮体がん(子宮内膜がん)(1)および子宮頸がん(2)の新たな患...
子宮内膜がんに対する免疫療法薬(イミフィンジ、キイトルーダ、Jemperli)の選択肢が増えるの画像

子宮内膜がんに対する免疫療法薬(イミフィンジ、キイトルーダ、Jemperli)の選択肢が増える

食品医薬品局(FDA)は、進行子宮内膜がん患者に対する3つの免疫療法薬を新たに承認した。承認されたのは免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる薬剤である。

6月14日に発表された1つ...
子宮頸がん検診のHPV検査は、現行ガイドライン推奨よりも長間隔で安全の画像

子宮頸がん検診のHPV検査は、現行ガイドライン推奨よりも長間隔で安全

HPV検診で陰性の場合、推奨されている5年後ではなく、8年後の検査でも、標準的な細胞診検診と同程度であることが判明した。ヒトパピローマウイルス(HPV)検診の陰性判定から8年後...