リキッドバイオプシーにより免疫チェックポイント阻害薬が奏効しうる患者の特定が可能に

検査に誤り訂正を採用して精度を高める

米国がん学会の定期刊行物であるClinical Cancer Research誌で発表された結果によると、新たなリキッドバイオプシー検査によって、マイクロサテライト不安定性(MSI)および腫瘍遺伝子変異量(TMB)の検出が可能になった。このことは、この新たなリキッドバイオプシー検査が、どの患者が免疫チェックポイント阻害薬に奏効する可能性が高いか判断する手助けとなりうることを示している。

2017年5月、米国食品医薬品局(FDA)は、高頻度のマイクロサテライト不安定性(MSI-HもしくはMSI-high)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)が検査で認められた切除不能または転移性の腫瘍を有する患者に、免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブ(キイトルーダ)を承認した。これは、FDAの初めての「がん腫を問わない」薬剤の承認であった。

しかし、MSI-HおよびdMMRを検出することはしばしば困難であると、バルチモアのPersonal Genome Diagnostics社のであり、この試験の筆頭著者のAndrew Georgiadis理学修士(MS)は説明した。現在MSIは、組織生検を行ったうえでPCR増幅または’次世代シーケンシング’といった技術を用いて検出される。これらの過程は複雑で、検出限界があるため、腫瘍検体によっては十分な組織が含まれていないために正確な検査ができないこともありますと、彼は付け加えた。

「リキッドバイオプシーによってMSIが評価できれば、組織量が限られていたり外科的生検を追加で行うには安全性に懸念がある患者など、より多くの患者にMSI検査が行えるようになる可能性があります」と、Georgiadis氏は語った。

この試験において、研究者らは、Personal Genome Diagnostics社により開発されたリキッドバイオプシー法の感度および特異度を評価することを目標とした。彼らは、98000塩基の汎がん58遺伝子パネルを開発し、多因子誤り訂正法および新たなピーク検出アルゴリズムを採用して、血中循環DNA (cfDNA)中のMSIフレームシフト対立遺伝子を特定した。この試験は、進行がん患者61人と、健康な人由来の血漿試料163個に基づいたものであった。

著者らは、腫瘍DNA中の変化したマイクロサテライト配列の長さを正常なDNAと比較して測定することにより、MSIを検出することが可能であると説明した。この試験では、研究者らは誤り訂正のために特定の配列データに標識をつけ、その後データを、遺伝子座の不安定性を特定するピーク検出アルゴリズムに投入した。20%以上の遺伝子座がMSIを有すると判断された場合、その試料はMSI-highと分類された。

腫瘍遺伝子変異量(TMB)に関しては、次世代シーケンシングデータを処理し、VariantDxソフトウェアを使用して多様体を特定した。研究者らは、遺伝子変異量が非常に高い腫瘍であると判定する基準として、標的とした血漿パネルのうち5個の変異を閾値に設定した。

MSIに関しては、検査の特異度は99%超、感度は78%であった。腫瘍遺伝子変異量(TMB)に関しては、検査の特異度は99%超、感度は67%であった。

研究者らは、転移を有する、大腸がん、十二指腸乳頭部がん、小腸がん、子宮内膜がん、胃がん、および甲状腺がん患者29人からは血漿も採取した。これらの患者のうち、保存しておいた腫瘍組織からの解析によって、23人がMSI-high、6人がマイクロサテライト安定性と分類された。VariantDx検査では、MSI-high患者23人中18人(78.3%)が(血漿でも)高頻度MSIと判定され、マイクロサテライト安定性であった6人は(全員血漿でも)正しく判定された。

研究者らにより、治療前の血中DNA中のMSIの直接検出が、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた患者の無増悪生存と関連があることが見出された。全生存の改善は、統計的に有意ではなかった。

「リキッドバイオプシーによってMSIおよびTMBの解析がリアルタイムかつ包括的に行うことができ、組織生検につきものの生検部位のみの情報しか得られないといったバイアスの問題が解決できます。そのように考えると、MSIとTMBのリキッドバイオプシー解析が、保存組織よりも免疫療法の奏効をより予測できるのかもしれないということもわれわれのデータは示しています」とGeorgiadis氏は語った。

ジョンズホプキンスのシドニーキンメルがんセンター腫瘍科准教授である共同著者のDung Le医師は、この試験の結果がさらに検証され検査が一般的に実施できるようになった場合、より多くの患者が免疫チェックポイント阻害薬の恩恵を受けられる可能性があると語った。

「MSI-high腫瘍を有する進行難治性がん患者の大半に、免疫療法による治療を受ける選択肢が与えられるでしょう」と、彼女は語った。「検査がより利用しやすく、より安価になり、組織採取や病理学的組織などの必要性がより少なくなれば、より多くの患者が検査を受けることができます」

著者らは、この試験は少数のがん患者集団に限定されていたことを言及した。この試験の結果を裏付けるために、より広範囲のタイプの腫瘍を対象とした、今後の研究が必要である。

この試験は、米国国立衛生研究所、Stand Up To Cancer Colorectal Cancer Dream Team Translational Research Grant、Stand Up To Cancer-Dutch Cancer Society International Translational Cancer Research Dream Team Grant、およびCommonwealth Foundationから助成金の支援を受けた。

Georgiadis氏およびこの試験の協力著者らは、Personal Genome Diagnostics社の社員、役員、または有給顧問である。

翻訳担当者 串間貴絵

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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