画像検査を抑制する動きにもかかわらず、検査頻度は上昇

画像検査の前に潜在的弊害があることを考慮すべき、と研究グループは結論づけている。

診療における画像検査の利用を控えるよう医師グループが広範なキャンペーンを行っている。それにもかかわらず、米国およびオンタリオ州(カナダ)では、CT、MRI、およびそれ以外の画像検査の頻度は上昇傾向を示している。カリフォルニア大学デービス病院、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、およびKaiser Permanenteの研究グループが1.35億件超の画像検査を対象とした新規研究を実施したが、この結果はその研究により判明した。画像検査の頻度上昇は、研究者にとって懸念すべき事態である。なぜならば、画像検査は過剰に行われていると考えられているからである。

本試験は2019年9月3日に米国医学会誌(JAMA)に掲載された。異なる集団での画像検査の頻度を調べるものとして、この研究は規模からすると最初のものである。この研究によれば、画像検査の伸びは2000年代初期には抑えられていたが、近年ではほとんど全ての患者年齢群においてコンピュータ断層撮影(CT)検査および磁気共鳴画像(MRI)検査の頻度が再び上昇傾向を示している。これと大きく異なる傾向を示すのは小児における使用であり、近年では減少傾向を示している。

CT検査では、電離放射線を利用して体内の画像情報を得ており、被ばく量は従来のX線検査よりも大幅に高くなる。一方、MRI検査では磁場と電波を利用して体内の画像情報を得ており、患者は電離放射線にはばく露されない。著者らが注意を促しているように、本試験は画像検査の適切性やその利用が患者転帰の向上につながるか否かについて述べているものではない。

「画像検査は医療において重要な役割を果たしており、疾病に対し正しい診断・治療法を決定する際に有用です。しかし、偶発的所見、過剰診断、患者の不安感、およびがんリスクの増大を伴う放射線被ばくなど、患者に弊害をもたらすものでもあるのです」、と本研究の筆頭著者であるRebecca Smith-Bindman医師(放射線学・疫学・生物統計学・産科学・生殖医療学教授、カリフォルニア大学サンフランシスコ校)は述べた。

画像検査に伴う医療費負担と不必要な画像検査を減らすための啓蒙活動のおかげで、その頻度は低下傾向を示していると一般的には考えられている。しかし、研究チームは、成人におけるCT検査およびMRI検査の頻度の再上昇傾向を確認しており、一般的な認識とは異なるものであった。

「医療をめぐるすべての点と同様、画像検査利用の正当性を確認することは大切です。また、画像検査により生じうる弊害と有益性を秤にかけることも大切です」、とSmith-Bindman医師は述べた。Smith-Bindman医師はフィリップ・R・リー健康政策研究所の一員でもある。「画像検査を受ける方全員が偽陽性診断と過剰診断による弊害を被る可能性があります。ですから、その点について、画像検査を受ける際に考慮する必要があります」。

カリフォルニア大学デービス病院の公衆衛生科学部門の生物統計学教授であるDiana Miglioretti博士(本試験の統括著者)は、本試験の知見からいくらか希望をもたらす兆候が得られた点を述べた。

「小児におけるCT検査の利用頻度が低下し始めた点は朗報です」、とMiglioretti博士は述べた。Miglioretti博士は、Kaiser Permanente Washington Health Research Instituteの上席研究者でもある。「ですが、米国ではカナダよりも利用頻度が大幅に高くなっています。つまり、まだまだ改善の余地があります。また、画像検査は放射線によるがんの誘発リスクを伴うため、成人での不必要な利用を減らすことも重要です」。

研究チームは、米国の7つの保健医療制度およびオンタリオ州(カナダ)の国民皆保険制度に1600~2100万人の成人・小児患者を登録した。登録した患者集団は多岐にわたり、2000~2016年の登録集団全体での医用画像検査のパターン分析を行った。米国のデータでは、Kaiser Permanenteなどの完全統合的医療システムと出来高払い方式のHMOやPPOなどの混合保険の両方での医療受給者を対象としている。

「米国とオンタリオ州(カナダ)での7つの医療制度での16年に渡る医用画像検査の利用状況を把握しました。これは、北米の小児から高齢者までの画像診断を検討した研究としては、今までで最も包括的な研究となっています」、と本研究の共同著者であるMarilyn Kwan博士は述べた。Marilyn Kwan博士は、 Kaiser Permanente Northern California Division of Research上級研究員でもある。

翻訳担当者 三浦恵子

監修 松本恒(放射線診断/仙台星陵クリニック)

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