治験薬Umbralisib単剤投与が再発緩徐進行型リンパ腫に有効

MDアンダーソンの第2相試験が、辺縁帯リンパ腫に対するumbralisibの良好な忍容性と高い奏効率を示す

治験薬umbralisib[ウムブラリシブ]は、再発した辺縁帯リンパ腫患者の有効な治療となることがテキサス大学MDアンダーソンがんセンターにおける試験で明らかになった。この第2相試験の結果は、アトランタで開催された米国がん学会(AACR)年次総会2019において、試験共同責任者であるNathan Fowler医師(リンパ腫・骨髄腫部門准教授)から発表された。

 辺縁帯リンパ腫は、診断されたすべてのリンパ腫の6%を占める低悪性度の非ホジキンリンパ腫である。辺縁帯リンパ腫は治療に反応するが、再発する患者が多く、再発時の治療選択肢はわずかしかない。

 umbralisibは低悪性度リンパ腫にかなり有効な新しいタイプの薬剤のひとつです」とFowler氏は述べた。「これらのPI3K阻害剤は、幅広い低悪性度リンパ腫に効果があり、辺縁帯リンパ腫で発現している主要なシグナル伝達の一部を停止するのに有効です」。

研究チームの報告によれば、6カ月以上の追跡期間で、患者の55%が、umbralisib投与後に部分奏効または完全奏効を示した。umbralisibは、辺縁帯リンパ腫細胞の増殖および増加に関連するシグナル伝達経路を標的とする小分子阻害剤である。Felipe Samaniego医師(リンパ腫・骨髄腫部門准教授)が試験共同責任者であった。

試験には69人の患者が登録され、38人の患者は良好な反応を示し、1年後の無増悪生存率は71%であった。患者にはumbralisibを1日1回、経口投与した。

「本試験は進行中であり、まだ奏効期間の中央値に達していません。本剤を投与された大部分の患者で奏効が持続しています」とFowler氏は述べた。

平均的な辺縁帯リンパ腫患者は約60歳で同疾患と診断され、通常、リツキシマブと呼ばれるモノクローナル抗体の単剤、あるいは化学療法との併用で治療される。

「本疾患は、高い奏効率をもたらす優れた治療選択肢が複数あり、初めのうちは治療によく反応します」とFowler氏は述べた。「残念ながら、これらの患者の約70%で再発がみられ、再発時には限られた治療選択肢しかありません。1年以内に再発することもあり、再発まで数年かかることもありますが、大部分の患者はいずれ標準治療に反応しなくなります」。

Fowler氏は、彼のチームが化学療法またはモノクローナル抗体を含むいくつかの標準治療選択肢が奏効しなかった患者に特に注目していると加えた。辺縁帯リンパ腫を含むあまり一般的でないリンパ腫に対して、新規治療法が複数あることがFowler氏の励みとなっている。

「MDアンダーソンでわれわれは幸運にもリンパ腫に対するこれらの分子標的薬のいくつかを開発してきました」とFowler氏は述べた。「本施設で実施されたPI3KおよびBTK阻害剤の第1相試験により、複数のリンパ腫型に対するこれらの薬剤の多くが米国食品医薬品局から承認されています」。

本試験に参加した他の施設は以下のとおり:Jagiellonian University, Krakow, Poland; the Institute of Hematology and Transfusion Medicine, Warsaw; Levine Cancer Institute, Charlotte, N.C.; the Sarah Cannon Research Institute, Chattanooga, Tenn.; King’s College Hospital NHS Foundation Trust, London; the Sara Cannon Research/Florida Cancer Specialists, Fort Myers, Fla.; John Theurer Cancer Center, Hackensack, N.J.; Copernicus Memorial Hospital, Lodz, Poland; Moffitt Cancer Center, Tampa, Fla.; Universitá Vita-Salute San Raffaele and IRCCS Istituto Scientifico San Raffaele, Milan; European Institute of Oncology, Milan; Rocky Mountain Cancer Center, Aurora, Colo.; Willamette Valley Cancer Institute, Eugene, Ore.; Compass Oncology, Vancouver, Wash.; Columbia University Medical Center, New York; Sir Charles Gairdner Hospital, Perth, Australia; TG Therapeutics, Inc., New York; and University of Bologna, Italy.

本試験はTG Therapeutics社から資金提供を受けた。Fowler氏はTG Therapeutics社の科学諮問委員会の委員である。開示情報の一覧は、AACRの抄録で閲覧可能である。

翻訳担当者 木下秀文

監修 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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