アルコールが関連するがん
MDアンダーソン OncoLog 2018年4月号(Volume 63, Issue 4)
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飲酒で一部のがんのリスクが増加
夕食時にワインを一杯、あるいはアフターファイブに友人とカクテル――お酒を飲むことが人生の楽しみであるという人は多い。一方で、飲酒、なかでも大量飲酒は健康に害をもたらす可能性があり、一部のがんのリスクも高める。
「アルコールががんのリスク因子であることはあまり認識されていません」。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの臨床がん予防部門教授のAbenaa Brewster医師はこう話す。「喫煙とがんの関連については皆さんよくご存じなのですが、アルコールとがんの関連についてお気づきの方は多くありません」。アルコールとがんの関連を啓発しようと、Brewster氏と米国臨床腫瘍学会のメンバーはJournal of Clinical Oncology誌2018年1月号にこの話題に関するポジションペーパーを掲載した。
このポジションペーパーでは、WHO(世界保健機関)がアルコールを発がん性物質に分類していることを指摘する。これは、研究により飲酒と一部のがんの関連が示されていることに基づく。中には、中程度の飲酒でもリスクが増加するがんがある。
アルコールの含有量と摂取量
飲酒ががんのリスクに与える影響を考える際、1杯に含まれるアルコールの量を知っておくことがまず必要である。米国保健福祉省が出している「米国人のための食生活指針」によると、酒類の標準的な1杯とする量に含まれるアルコールは14グラムである。これはビール355mL、ワイン148mL、40度の蒸留酒45mLに含まれる量におおむね相当する。
「皆さんに気をつけていただきたいのはその1杯のサイズです」とBrewster氏。「ハリケーンといったカクテルなどは大きなグラスで出てきますが、これはお酒1杯分どころではありません」。
食生活指針では、適量飲酒の定義を女性は1日1杯以下、男性は1日2杯以下の摂取としている。大量飲酒の定義は、女性が1日4杯以上または週7杯以上、男性が1日5杯以上または週14杯以上摂取となっている。
アルコール関連死の死因の半分を占める短時間の大量飲酒(binge drinking)の定義は、2時間以内に女性が4杯以上、男性が5杯以上摂取、とされている。「短時間の大量飲酒によるがんリスクへの影響はわかっていませんが、すべての面で良くないことは確かです」とBrewster氏は話す。
アルコールが原因となるがん
頭頚部がん 典型的な頭頚部がんの一種である食道の扁平上皮がんのリスクは、飲酒しない人に比べ、適量飲酒者で2倍、大量飲酒者で4倍である。遺伝的に体内のアルコールの分解能が低い人の場合、飲酒による食道の扁平上皮がんリスクはさらに高くなる。
飲酒しない人と比べ、大量飲酒者の喉頭(声帯)のがんリスクは約3倍、口腔のがんおよび咽頭(口から食道につながる部位)のがんのリスクは5倍以上となる。
飲酒する人が喫煙すると頭頚部がんのリスクがさらに増加する。
肝がん 適量飲酒者は飲酒しない人に比べリスクが少し上昇、大量飲酒者はリスクが2倍になる。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患があると飲酒の悪影響がさらに大きくなる。
大腸がん 大量飲酒者は飲酒しない人に比べ大腸がんのリスクが約1.5倍になる。
乳がん 適量飲酒者は飲酒しない人に比べリスクが少し上昇し、大量飲酒者はリスクが1.5倍以上になる。英国で行われた大規模研究では、1日のアルコール摂取量が10g増えるごとに乳がんリスクが12%増加することが示されている。
好影響対リスク
適量飲酒は健康に好影響をもたらすこともあるため、アルコール摂取のリスクを理解することはなかなか難しい。アルコール摂取により非ホジキンリンパ腫および腎がんのリスクが低下することが複数の研究で示唆されている。また、赤ワインの摂取はいわゆる善玉コレステロール(HDL)を増加させることが知られ、これは心臓の健康を増進する。しかし、食生活指針、米国がん学会、米国心臓学会のいずれも、現在飲酒していない人がその好影響とされるものを求めて飲酒しはじめるべきでないとしており、また大量飲酒に対する警告を発している。
Brewster氏は「飲む習慣がないのでしたら、お酒に手を出すべきではありません」と述べ、すでに飲酒習慣がある人の場合はその消費量を適量までに抑えるべきだとしている。「若年層ではつきあいでの飲酒が増えており、アルコール関連がんがやがてこの年齢層の問題になってくるのではないかとわれわれは強く懸念しています」。
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