ドセタキセル+カルボプラチン、卵巣癌の代替治療になる可能
米国国立がん研究所(NCI) 臨床試験結果
http://cancer.gov/clinicaltrials/results/docetaxel-and-ovarian1104(2004/11/23)Nov. 17, 2004, issue of the Journal of the NCIの報告によると、ドセタキセル(タキソテール)治療を受けた卵巣癌患者は、パクリタキセル(タキソール)の標準治療の患者と同様に効果があり、重篤な副作用の発症率が低かった。
要約
カルボプラチンを含む化学療法レジメンを受けた卵巣癌患者では、治療薬ドセタキセル(タキソテール)を用いた患者は、パクリタキセル(タキソール)を用いた標準レジメンを受けた患者と同様の効果を得られ、かつ重篤な副作用の比率が少なかったことが、国際的臨床試験で明らかになりました。2年目での分析では生存率に有意差はみられず、ドセタキセルをパクリタキセルの代用とすることで患者の延命が可能かどうかを断定するには時期尚早です。
出典 Journal of the National Cancer Institute, November 17, 2004 (ジャーナル要旨参照).
背景
カルボプラチンとパクリタキセルの併用療法は、現在アメリカで標準治療と考えられています。しかしながら、進行乳癌患者の試験と卵巣癌患者の予備試験では、ドセタキセル-パクリタキセルの化学的な従弟-は、より深刻な副作用は少なく、同等の効果があるかもしれないことが示唆されました。
試験
この試験は、未治療の1077人の卵巣癌患者を対象に行われました。彼らはパクリタキセルとカルボプラチン(標準治療)の群と、ドセタキセルとカルボプラチンの群に無作為に割付されました。患者は、定期的にQOL(生活の質)を評価するために作成されたアンケートに記入しました。追跡期間の中央値は23ヶ月でした。
この試験は、アメリカの一部の施設のほか、イギリス、いくつかのヨーロッパの国々、オーストラリア、ニュージーランドのセンターで行われました。この研究チームを指導したのは、the Scottish Gynaecological Cancer Trials Group、the Royal Marsden Hospital のStan Kaye氏です。
結果
病気の進行までの期間の中央値は両治療群とも同じ程度でした(パクリタキセル14.8ヶ月、ドセタキセル15ヶ月)。両治療群とも等しい数の患者に効果が見られました。効果とは、腫瘍が縮小し、新たな腫瘍が現れない、血中のマーカーが通常レベルに戻った、などです。
2年後の全生存率はパクリタキセル治療群で68.9%、ドセタキセル群64.2%で、統計的有意差はありませんでした-つまり、この差は偶然に起こりうる値です。追跡期間は、パクリタキセル群に比べてドセタキセル治療を受けた患者が最終的に永く生きるかどうか断定するには短すぎます。
パクリタキセル治療を受けた患者は、抜け毛、筋肉・関節痛、腹痛、麻痺、手足のしびれが高率で起こります。これに対し、ドセタキセルは嘔気や嘔吐、口内痛、白血球減少症などが起こりやすいです。しかしながら、全体的に、両群ともに自分たちのQOLをほぼ同じように評価しています。
制限事項
この試験は「影響力の大きい」ものではありません。つまり、ドセタキセルがパクリタキセルと同等に効果があるかどうかを断定するには人数が少なすぎます。しかしながら、2つのレジメンは同様であるといえば語弊がないでしょう。」と、Elise Kohn, M.D.氏(senior investigator and chair of the Gynecologic Malignancies Faculty with the Center for Cancer Research at the National Cancer Institute.)は述べています。
コメント
この試験の結果は、アメリカの標準治療を大きく変えるものにはならないだろうと、Kohn氏は言います。しかしながら、もし患者がパクリタキセルに対する禁忌、アレルギー反応や以前からの神経障害などがある場合、医師は迷わずドセタキセルを代用できるでしょう。
(野中希 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修 )
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