グリピカン1が膵臓がんのバイオマーカーとして有望

MDアンダーソン OncoLog 2015年8月号(Volume 60 / Number8)

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In Brief「グリピカン1が膵がんのバイオマーカーとして有望」

エクソソーム由来のバイオーマーカーが、早期膵臓がんの検出と診断に有用である可能性が明らかになった。これはテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが行った最近の研究知見によるもの。

グリピカン1タンパク質に富む血中循環性がん細胞に由来するエキソソーム(GPC1+crExos)をバイオマーカーに用いることが、非侵襲的スクリーニング手段として有用である可能性を、多国籍研究者チームが報告した。「約250人の膵がん患者の微量血清から、GPC1+crExos が高い特異性で高感度に検出されました。重要なのは、慢性期の膵炎患者から、早期段階および後期段階の膵臓がん患者を識別できていることです」と、本研究の上席著者であるRaghu Kalluri医学博士(MDアンダーソンのがん生物学部長、教授)は語った。

研究者らはまず、乳がんおよび前立腺がん細胞で過剰発現されるアンカー型膜タンパク質であるGPC1を、がんエキソソームに特異的なマーカーとして同定した。これらがんエキソソームは、がん細胞が分泌するウィルス大の細胞外小胞で、DNA、RNA、およびタンパク質を内包している。

研究チームはその後、(最も一般的な型の膵臓がんである)膵管腺がん患者190人および健常者100人の血液サンプルからエキソソームを分離し、がん患者のGPC1+crExosレベルが健常者と比較して有意に高く、GPC1+ crExosと膵がんが強い相関性を示していることを発見した。

さらに、これは組織学的に検証された前駆病変が認められる患者において、健康な人および良性膵疾患患者よりもGPC1+ crExosレベルが高値を示した、という解析結果と一致しており、両疾患群の識別に有用である可能性が示された。研究者らはこれらの結果を、56人の膵臓がん患者、6人の膵がん前駆病変保有患者、20人の健常者からなる独立したコホートで検証した。

膵臓がんは早期に発見できれば、膵頭十二指腸切除術(Whipple法)で根治できる可能性がある。しかし、ほとんどの場合は進行した段階で発見されるため、この手術が適用となるのは患者の約15%しかいない。

「膵臓がんも早期発見により、死亡率を低下させられる可能性が、手術後の病期と転帰を比較した研究結果が示唆しています」と、Kalluri医師は話す。「われわれの発見は、膵がんの早期発見について前例のないチャンスを示しているのです」。

本研究の結果は、Nature誌の6月24日号に掲載された。

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翻訳担当者 片瀬 ケイ

監修 石井 一夫 (ゲノム科学/東京農工大学)

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