axi-celによるCAR-T細胞療法が高リスクリンパ腫に継続的な奏効をもたらす
MDアンダーソンの試験結果が米国血液学会で発表された。
アブストラクト 93、739、 2
アキシカブタゲン シロルユーセル[axicabtagene ciloleucel](販売名:イエスカルタ、略称:axi-cel)というキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を受けた高リスクリンパ腫患者の奏効率は高いことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが主導する3つの臨床試験で示された。これらの結果は、2021年米国血液学会(ASH)年次総会で報告された。
axi-celは、自己抗CD19 CAR-T細胞療法で、患者自身のT細胞から製造される。患者のT細胞を抽出し、CAR分子で再プログラムすると、がん細胞を認識できるようになる。この再プログラムされたT細胞は、再び患者に注入されると、がんを攻撃する。axi-celは、ZUMA-1主試験に基づき、すでに2回以上の全身療法治療歴がある再発/難治性(R/R)大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)成人患者の治療薬として2017年にFDAから承認されている。
低悪性度非ホジキンリンパ腫患者に対する奏効が2年後も持続(アブストラクト93)
第2相ZUMA-5試験の追跡調査データにより、2回以上の治療歴があるが奏効が得られなかった再発/難治性(R/R)の低悪性度非ホジキンリンパ腫(iNHL)患者におけるaxi-celの長期生存の利益が明らかになった。臨床試験責任医師でありリンパ腫・骨髄腫部門教授であるSattva Neelapu医師が、現在進行中の試験の結果を発表した。
「低悪性度非ホジキンリンパ腫は進行が遅い慢性疾患であり、患者が頻繁に再発するため、新しい治療戦略が必要とされています」と、Neelapu医師は述べた。「axi-celが2年間にわたり継続的な利益をもたらし、これらの患者さんに持続的な治療法を提供する可能性があることを確認できたのは心強いことです」。
今回の解析は、試験で治療を受けた110人の患者を対象とし、中央値30.9カ月の追跡調査後の濾胞性リンパ腫(FL)患者が86人、中央値23.8カ月の追跡調査後の辺縁帯リンパ腫(MZL)患者が24人である。本治療法に関するこれまでの研究で報告されてきたように、本治療法は忍容性が良好であった。
濾胞性リンパ腫患者においては、94%が客観的奏効を示し、79%が完全奏効(CR)を達成した。濾胞性リンパ腫患者においては、推定奏効期間(DOR)と無増悪生存期間(PFS)の中央値が、それぞれ38.6カ月と39.6カ月であった。全生存期間(OS)の中央値には到達しなかったが、本試験では24カ月時点での推定全生存率は81%と報告されている。データカットオフ時点では、濾胞性リンパ腫の適格患者の57%が継続的な奏効を示した。
辺縁帯リンパ腫患者においては、83%が客観的奏効を示し、63%が完全奏効を達成した。奏効期間と全生存期間の中央値には到達しなかったが、24カ月時点での推定全生存率は70%であった。無増悪生存期間の中央値は17.3カ月であった。データカットオフ時点では、辺縁帯リンパ腫の適格患者の50%が継続的な奏効を示した。
2021年3月、ZUMA-5試験のデータにより、2回以上の治療歴がある濾胞性リンパ腫に対するCAR-T療法が初めてFDAに承認された。
本試験は、Gilead Company社傘下のKite Pharma社から資金提供を受けた。Neelapu医師は科学諮問委員会の委員を務めている。共著者の全リストは、こちらのアブストラクトを参照。
axi-celに高リスク大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者の初回治療としての可能性(アブストラクト739)
第2相ZUMA-12試験は、ZUMA-1試験の結果を発展させ、高リスク大細胞型B細胞リンパ腫患者に対する初回治療としてのaxi-celの使用を評価する試験である。本試験において、axi-celは、未だ満たされていない高い医療ニーズを有する患者集団において、高い確率で迅速かつ完全な奏効を示した。Neelapu医師は、本試験の結果についても発表した。
「ZUMA-12試験は、高リスク大細胞型B細胞リンパ腫に対する最先端のCAR-T細胞療法の最初の試験であり、ランダム化試験で結果を確認することを楽しみにしています」と、Neelapu医師は述べている。「さらなる研究が必要ですが、本試験はaxi-celの有効性を示し、患者さんが他の治療法の前にこの治療を受けることで持続的な利益を得られる可能性があることを示唆しています」。
高リスク大細胞型B細胞リンパ腫は、ダブルヒットもしくはトリプルヒットリンパ腫、または国際予後指標(IPI)もしくは中間陽電子放射断層撮影(PET)スキャンによって特定される追加の臨床的リスク因子を有する患者のサブグループである。歴史的に見て、これらの患者の約半数は、化学免疫療法などの典型的な治療手法では長期の疾患寛解が得られていない。
高リスク大細胞型B細胞リンパ腫患者40人が登録され、axi-celによる治療が行われた。95%がステージ3/4であり、25%が中央判定によるダブルヒットまたはトリプルヒット状態、78%が国際予後指標スコア3以上であった。本治療法の忍容性は良好で、新たな安全性シグナルは認められなかった。
解析の結果、axi-celを投与された患者の89%で客観的奏効が得られ、78%で完全奏効が認められた。データカットオフ時点で、中央値15.9カ月の追跡調査後の73%の患者で奏効が継続した。奏効期間(DOR)、無イベント生存期間(EFS)、無増悪生存期間(PFS)の中央値は未到達で、12カ月推定値はそれぞれ81%、73%、75%であった。12ヶ月時点の推定全生存率は91%であった。
研究者らは、治療に対する患者の奏効の持続性を確認する目的で、継続的な追跡調査を行うことを計画している。このような高リスク患者において、CAR-T細胞療法が既存の化学免疫療法による標準治療よりも優れていることを明確に示すには、さらなる臨床試験の実施が必要である。
本試験は、Gilead Company社傘下のKite Pharma社から資金提供を受けた。Neelapu医師は科学諮問委員会の委員を務めている。共同著者の全リストは、こちらのアブストラクトを参照。
axi-celの二次治療により、大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者の無イベント生存期間(EFS)が改善(アブストラクト2)
第3相ZUMA-7試験において、axi-celは標準治療(SOC)である自家幹細胞移植を伴う大量化学療法と比較して、無イベント生存期間において臨床的に有意な優越性を示した。この試験結果は2021年12月11日にNew England Journal of Medicine誌に掲載され、モフィットがんセンターのFrederick Locke医師が米国血液学会で発表する予定である。リンパ腫・骨髄腫部門の准教授であるJason Westin医師が、この研究の統括著者を務めている。
「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者が初回治療後に難治性や再発となった場合の標準治療としては、30年近く、大量化学療法と自家幹細胞移植が行われてきました。本試験は、新しい治療法であるaxi-celと呼ばれるCAR-T細胞療法が転帰を改善し、新しい標準治療(SOC)となり得るかを判断することを目的としています」とWestin医師は述べている。
本試験は、CAR-T細胞療法に関する初のランダム化第3相試験であり、再発/難治性大細胞型B細胞リンパ腫患者359人が登録され、axi-cel(170人)または標準治療(179人)のいずれかを二次治療として実施した。
追跡期間中央値24.9カ月で、無イベント生存期間の中央値がaxi-celでは標準治療と比較して有意に延長された。無イベント生存期間の中央値は、axi-celで8.3カ月、標準治療で2カ月であった。全奏効率は、axi-celで83%、標準治療で50%で、対応する完全奏効率は65%と32%であった。
axi-celの安全性は管理可能であり、三次治療でも同様であった。治療上有害な事象は、axi-cel投与群で155人の患者、標準治療群で140人の患者に認められた。axi-cel投与群では、グレード3のサイトカイン放出症候群が11人に、グレード3の神経学的事象が36人に発現した。
Westin医師は次のように結論付けている。「本試験は、パラダイムシフトを起こす試験です。私たちは高用量化学療法の時代から標的療法の時代へと移行することになります。私たちの患者さんはこの変化から利益を得るでしょう。axi-celは新しい標準治療として検討してよいでしょう」。
本試験は、Gilead Company社傘下の Kite Pharma社から資金提供を受けた。Westin医師はKite Pharma社から研究支援を受け、諮問委員会の委員およびコンサルタントを務めている。共著者の全リストとその開示情報はこちら。
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