テポチニブがMETエクソン14スキッピング変異を有する非小細胞肺がんに持続的奏効

第2相臨床試験で奏効率46.5%を示す

METエクソン14(METex14)スキッピング変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、分子標的治療薬テポチニブの奏効率が46.5%であったことが、本日発表のNew England Journal of Medicine誌の研究で示され、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが米国臨床腫瘍学会(ASCO)2020年次総会(Abstract 9556 – Poster 322)で研究発表を行った。 

「この試験で、同クラスの薬剤を対象とした別の研究とともに並行して、METエクソン14を標的とする非小細胞肺がん治療の可能性を立証することに成功しました」と統括著者のXiuning Le医学博士 (胸部・頭頸部臨床腫瘍学助教)は述べる。「われわれは、新たな肺がん患者集団がプレシジョン医療の利益を受けられる可能性を示すことができて喜ばしく思います」。

METex14スキッピングとはがんの増殖を促進する突然変異であり、NSCLC患者全体の3~4%に起こる。METex14スキッピングを有する患者は年齢中央値が74歳と高齢傾向であり、既存の分子標的治療の対象となるような他の変異を有していないことが多い。

本試験は単群国際第2相VISION試験のコホートAの結果であり、VISION試験はさらにコホートを追加して進行中である。NSCLC患者6,700人以上の血液または組織生検を通じて事前にMET変異をスクリーニングした。METex14スキッピングを有する進行NSCLC患者合計152人がテポチニブ投与治療を受けた。前治療歴がある患者または脳転移が安定している患者が試験への参加を認められた。試験参加者らはテポチニブ500mgを1日1回経口投与された。

高齢者集団に有益性を示す

主要評価項目は、RECIST v1.1基準に基づき完全奏効または部分奏効と定義された奏効率であり、第三者審査で確認を行った。9カ月間の追跡期間調査後、主要有効性解析対象集団99人の奏効率は46.5%、奏効持続期間は11.1カ月であった。

「ほぼ1年という奏効期間中央値は、この患者集団にとって非常に有意義です」とLe氏。「従来の化学療法以外にも、経口投与による別の治療選択肢があることで、生活の質を長期間にわたり向上させることができるのは、高齢の肺がん患者さんにとって重要です」。

毒性は対処可能であり、グレード3以上の治療関連有害事象が患者の27.6%で報告された。最も一般的な副作用は末梢性浮腫であった。有害事象により治療を中止した患者は11%であった。

本試験では患者報告アウトカムも収集し、報告では咳の改善および全体的なQOLの維持が示された。

バイオマーカー検出のためのリキッドバイオプシー

VISION試験は、リキッドバイオプシーによって最大規模のMETex14スキッピング患者集団を前向きに同定した試験であり、この変異を検出するうえで、リキッドバイオプシーに高い信頼性があることを立証した。またこの研究は、リキッドバイオプシーが薬剤に対する反応を同定するうえでも有用な手段であることを示した。

51人の患者では、治療前および治療中の両方のリキッドバイオプシー検体が共に解析可能であった。’次世代シーケンサー’を用いた解析により、34人の患者では血液中の変異遺伝子の完全消失または顕著な減少といった、分子生物学的効果が確認された。またこういった分子生物学的に効果が認められた患者の68%では、画像的にも効果が認められた。

「これまで分子標的治療の選択肢がなかった非小細胞肺がん患者群に対して、非常に有効な経口治療法を確立したという点で、この研究は大きな進歩を遂げました」と、共著者であるJohn Heymach医学博士(胸部・頭頸部臨床腫瘍学部長)は述べる。「患者さんへの新規治療法の提供に努めながら、この分野をリードすることをわれわれは誇りに思います」。

VISION試験の初期データに基づき、2019年9月、米国食品医薬品局(FDA)はテポチニブを画期的治療薬に指定した。日本では、MET陽性NSCLCに対する初の経口分子標的治療薬として2020年3月に承認された。

共著者および開示の全リストは論文に記載されている。本研究はドイツ・ダルムシュタットのMerck KGaA社から支援を受けた。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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