前立腺がんに対する小線源放射線療法ガイドラインを更新

米国臨床腫瘍学会(ASCO)および Cancer Care Ontarioが、本日、前立腺がん患者に対する小線源療法(内部照射)に関する共同診療ガイドラインの更新を発表した。この更新により、それぞれの患者リスク群に対するエビデンスに基づいた推奨が示され、最も有効な小線源療法が規定される。

「小線源療法は、現在、大多数の前立腺がん患者に対する非外科的標準治療となっています。このガイドラインにより単独療法、あるいは併用療法の一環としての小線源治療について極めて明確な指針が得られます」、と、このガイドラインの更新情報を作成した専門委員会の共同委員長の一人であるAndrew Loblaw医師(FRCPC、 MSc)がASCOを代表して述べた。「また、小線源療法は外照射療法よりも簡便であり、前立腺がんが治癒する可能性もより高くなります。しかし、すべての患者が小線源療法を受けるべきというわけではなく、また、すべての治療センターが質の高い小線源療法について経験を積んでいるわけでもありません。」

このガイドラインの推奨は、新たに前立腺がんと診断された患者で、積極的治療を要する、あるいはそれを選択した患者、若しくは積極的サーベイランス(AS)を考慮していないかそれが適応ではない患者に対応する。患者が中等度~重度の泌尿器症状、前立腺肥大、前立腺の手術歴、および放射線治療に対する禁忌を有する場合、あるいは身体的に問題がある場合は小線源療法が不適応となる場合がある。

「泌尿器科医は前立腺がん患者の初診医となることが多く、しばしばゲートキーパーとなります。このガイドライン更新で示された新たな情報を、泌尿器科医は患者診察および治療法の決定に取り込めるのです」、と、このガイドラインの更新情報を作成した専門委員会の共同委員長の一人であるJoseph Chin医師(FRCSC)がCancer Care Ontarioを代表して述べた。小線源療法は、特定の患者にとって適応となる場合や不適応となる場合が考えられます。ですが、最終的には、治療選択の最適化により転帰が改善されるに違いありません。」

【ガイドライン更新の主な推奨】

● 低リスクの前立腺がん患者に対しては、低線量率(LDR)小線源療法単独、放射線外照射療法(EBRT)単独、あるいは前立腺全摘除術のいずれかを行うべきである。

● 低~中リスクの前立腺がん(グリーソンスコア 7、PSA値 < 10 ng/mlかグリーソンスコア 6、PSA値 10~20 ng/ml)に対して、LDR小線源療法単独を行うことができる。

● 中リスクの前立腺がん患者で、アンドロゲン除去療法(ADT)併用・非併用下での外照射療法を選択した場合、低線量率小線源療法あるいは高線量率小線源療法ブーストを追加すべきである。

● 高リスクの前立腺がん患者で外照射療法およびアンドロゲン除去療法を受ける場合、小線源療法によるブースト照射(低線量率あるいは高線量率)を行うべきである。

●  低線量率小線源療法を受ける患者については、ヨウ素125およびパラジウム103は、それぞれ選択肢として妥当な同位元素である。しかし、セシウム131の使用あるいは高線量率単独療法の使用の賛否については推奨がない。

● 患者は、横断的な観点からが好ましいが、偏りがなく、客観的な方法で、すべての治療選択肢(適応となる手術、外照射療法、小線源療法、積極的サーベイランス)について説明されるべきである。

● 小線源療法を選択した場合、患者は厳格な品質保証基準に従う治療センターに紹介されるべきである。

このガイドラインの更新情報作成のために、専門委員会は2011年~2016年12月の間に発表された関連文献を検討した。5つのランダム化対照臨床試験によりこのガイドライン更新のためのエビデンスを得た。この「前立腺がん患者に対する小線源療法ガイドラインの更新(Brachytherapy for Patients with Prostate Cancer: American Society of Clinical Oncology/Cancer Care Ontario Joint Guideline Update)」はJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。

このガイドライン更新についての情報はwww.asco.org/Brachytherapy-guidelineに記載されている。

前立腺がんに関する患者向け情報はhttp://www.cancer.net/prostateに記載されている。

ASCOは同ガイドラインに関し、ASCO Guidelines Wiki (www.asco.org/guidelineswiki)を通してがん専門医、臨床医、および患者がフィードバックすることを奨励する。

翻訳担当者 三浦恵子

監修 河村光栄 (京都大学大学院 医学研究科 放射線腫瘍学・画像応用治療学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明する研究結果の画像

前立腺がんにおけるテストステロンの逆説的効果を解明する研究結果

デューク大学医学部デューク大学医療センター最近、前立腺がんの治療において矛盾した事実が明らかになった: テストステロンの産生を阻害することで、病気の初期段階では腫瘍の成長が止まり、一方...
一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性の画像

一部の生化学的再発前立腺がんに、精密医薬品オラパリブがホルモン療法なしで有効な可能性

ジョンズホプキンス大学抗がん剤オラパリブ(販売名:リムパーザ)は、BRCA2などの遺伝子に変異を有する患者に対し、男性ホルモン療法を併用せずに、生化学的再発をきたした前立腺がんの治療に...
転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持の画像

転移性前立腺がん試験、アンドロゲン受容体経路阻害薬の変更よりも放射性リガンド療法を支持

第3相PSMAforeの追跡研究研究概要表題タキサン未投与の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者における[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性とARPI変更との比較:ラ...
転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望の画像

転移性前立腺がんに生物学的製剤SV-102とデバイスの併用免疫療法SYNC-Tは有望

低温プローブを用いる治験的治療では、前立腺がん細胞の一部を死滅させ、腫瘍特異的ネオアンチゲン(※がん細胞特有の遺伝子変異などによって新たに生じた抗原)を放出させ免疫反応を促進する。...