薬剤抵抗性の多発性骨髄腫に対する免疫療法薬daratumumab、初の臨床試験で効果が認められる
ダナファーバー癌研究所
ダナファーバー癌研究所などの臨床試験担当医師は、8月26日、画期的な抗体治療の最初の臨床試験において、すでに多数の治療をし尽くした多発性骨髄腫患者の3分の1で部分寛解以上の効果がみられたことを、New England Journal of Medicine誌の電子版で報告した。
本剤のダラツムマブ(daratumumab)は、今回の第1/2相試験において最大用量の投与を受けた患者においても全体的に安全であることが臨床試験確認された。第1/2相試験の結果は、より多くの患者を対象に施行される第2/3相試験の実施を強く支持するものであると、著者は述べている。
「多発性骨髄腫の治療は、プロテアソーム阻害薬(腫瘍細胞のタンパク質の分解を阻害する)や強力な免疫調整剤による治療が導入され、近年、顕著に改善しています」と、本報告書の上級著者・試験責任医師であり、ダナファーバー癌研究所ジェローム・リッパー多発性骨髄腫センターの臨床プログラムリーダー兼臨床研究ディレクターを務めるPaul Richardson医師、およびハーバード大学医学部のR.J. Corman教授は述べている。
「これらの薬剤は、一般的に長期にわたって効きますが、残念ながら耐性化は避けられず、そうなると治療の選択肢は非常に少なくなります。従って、特にこのような患者のための新たな治療の開発は大いに必要とされています」と、Richardson医師は語る。
ダラツムマブは、CD38を標的とするモノクローナル抗体製剤である。CD38は、骨髄腫細胞の表面に多く発現する一方で正常細胞にはさほど発現しないタンパク質であり、受容体としての役割を果たし、細胞内部にシグナルを伝達する。研究によると、ダラツムマブは、免疫系に関わるいくつかの重要なメカニズムにより、CD38が発現している腫瘍細胞を標的にし、死滅させる。
今回の新たな試験には72人の患者が参加し、全員、以前に2つ以上の治療を受けたものの再発し、もはや治療への反応がない患者である。投与量を漸増した第1相に続き、第2相でも72人の患者が登録した。投与量は2通りに設定され、さまざまな投与計画(週1回、月2回、月1回)で最長2年間にわたり施行された。
高用量を投与した42人の患者中、36%の患者で持続的奏効がみられ、そのうち2人で完全寛解、さらに2人で非常に良好な寛解(最良部分奏効)が認められた。このグループにおいて、無増悪生存期間中央値は5.6カ月であった。さらに、奏効患者のうち3分の2において、少なくとも12カ月間、疾患の進行がみられなかった。
本剤の副作用のほとんどは比較的軽度であり、最も多かったものは疲労、鼻づまり、発熱である。肺炎、血小板数減少、白血球数減少、貧血、血糖上昇などといった重度の副作用の頻度は少なかった。しかし、これらは抗体療法そのものの直接的影響ではないと考えられている。
Richardson医師は、「ダラツムマブは、骨髄腫で治療の選択肢がほとんどない難治性の患者において、単剤治療で有意な効果を示しました。本剤は重要な受容体を標的とし、他の治療剤とは異なるメカニズムで効くため、より大規模な臨床試験で包括的な試験を行う利点は明らかです。これらの研究で出た予備的結果は、大きな励みになっています」と述べた。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
骨髄腫に関連する記事
骨髄性悪性腫瘍の精密医療による治療:NIH臨床試験
2024年11月4日
NPM1変異を有する骨髄腫瘍では骨髄芽球の割合との相関は認められない
2024年9月4日
【ASCO2024年次総会】多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン追加で進行・死亡リスク減
2024年8月8日
再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか
2024年2月20日