腫瘍抑制物質を炎症経路阻害物質として発見

NCIニュースノート

米国国立癌研究所(NCI)の研究者らは、腫瘍抑制物質として作用するタンパク質FBXW7が、炎症経路の強度を弱めるのに重要でもあることを発見した。長い間、発癌メカニズムと炎症の間には複雑な作用が存在することは認識されていた。例えば、インターロイキン-6として知られる他のタンパク質のような炎症シグナル分子は、ある種のバクテリア由来の分子を認識することができる。しかし、これらの分子は、癌化の進行を促進できる癌細胞内でも産生される。FBXW7タンパク質は癌細胞内の多くの癌促進タンパク質レベルの減少を助けることが知られている。この研究は、FBXW7タンパク質が癌細胞および免疫細胞内で多くの遺伝子の表現を制御するC/EBPdeltaタンパク質レベルの低下により到達する、炎症シグナルの減少がどのように働くかを概説する、世界初の研究になる。研究者らは、FBXW7レベルの一時的な減少は、癌リスクの増加と慢性炎症疾患に関連するインターロイキン-6の血清レベルの増加に十分であることをマウスで明らかにした。その反面、C/EBPdeltaレベルが減少したマウスおよびヒトの細胞では、FBXW7が増加し炎症シグナルは弱くなった。これらの結果、腫瘍抑制と炎症阻害の間には重要な機能学的な関連があることが分かった。米国国立癌研究所(NCI)癌研究センターのEsta Sterneck博士が率いるグループによるこの研究は、Nature Communications誌オンライン版の2013年4月9日号で発表された。

FBXW7は、GSK-3βとして知られる酵素と共に働くため、炎症反応の抑制物質としてGSK-3betaに関する研究も行われた。逆説的に、GSK-3betaは主に炎症誘発物質として知られ、アルツハイマー、癌、糖尿病、肥満、そして免疫疾患におけるGSK-3betaの炎症活動を阻害する薬が開発されている。この研究は、GSK-3betaの阻害を標的とした薬の臨床応用を困難にする可能性のある二重の役割をもつという更なる証拠をもたらした。しかしこれらの新発見は、癌や他の疾患での急性対慢性炎症を制御する分子的現象に関する更なる洞察をもたらすために利用できるかもしれない。

翻訳担当者 岩崎多歌子

監修 石井一夫 (ゲノム科学/東京農工大学)

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